mooncatの図書館

本が好きです。図書館に住みたい。読んだ本の感想文を書いています。

2021-01-01から1年間の記事一覧

なんて素敵にジャパネスク 氷室冴子 レビュー ネタバレあり

中学生の頃に夢中になった本を20年以上の時を経て手に取った。 あの頃はドキドキしながら読んだなぁと思いつつ、今の自分が読んだらどう思うのだろうと。20年経ってもやはり色褪せない、むしろこの年齢だからこそ分かることもある。中学生の頃よりも夢中にな…

スイート・マイホーム 神津凛子 レビュー ネタバレあり

家は生活の基本だ。 多額の借金がある人の家や競売にかけられている家の汚部屋率はとても高い。部屋の乱れは心の乱れとは良く言ったものだ。家と住む人とは必ず強く繋がっている。 主人公の賢二は念願のマイホームを手に入れる。妻と娘との3人暮らし。しか…

水底フェスタ 辻村深月 レビュー ネタバレあり

臭いものに蓋をする。 いじめは無かった。いじめに気付かなかった。いじめを苦に自殺した生徒を前に、そんな無責任な教師や校長の声が聞こえてくるような気がした。 閉鎖的な湖畔の村、睦ッ代村出身の織場由貴美は村を離れ上京し芸能界で成功していた。そん…

子どもたちは夜と遊ぶ 辻村深月 レビュー ネタバレあり

不幸になってはいけません。 秋山教授のこの言葉がとても印象に残った。幸せかどうかは自分が決めることだとは思うが、自分で自分を不幸にしてはいけない。自分を故意に傷つける人がいるのなら距離を置く。子供の頃はこれできないよね。虐待をする親の元に生…

鸚鵡楼の惨劇 真梨幸子 レビュー ネタバレあり

もう二度と真梨幸子には騙されない。 そう思って心して読んだのに、またしてもやられてしまった。人間の思い込みの力には勝てないね。冒頭から騙された。“こうちゃん”=“河上航一”って思うよね?もうずーっと最後までこう思い込んでたから最後の衝撃がすごか…

紫蘭の花嫁 乃南アサ レビュー ネタバレあり

乃南アサ先生の作品は最後の最後まで見逃せない。 今作は1992年に書かれたもので、今から約30年も前のお話。時代背景もちょっと古い。カップルのことはアベックと書かれているし、テレクラなんて今の若い方には何それ?と感じることだろう。今で言う婚活アプ…

うつくしい子ども 石田衣良 レビュー ネタバレあり

愛情とは支配することだから。 本作で一番印象に残った言葉。こういう曲がった愛され方をした人って意外と多いのではないだろうか。子供には成功してほしい、良い人生を歩んで欲しいと望むばかりに子供にたくさんのことを要求する。みんなと仲良くしなさい、…

カケラ 湊かなえ レビュー ネタバレあり

日本人は他人の容姿に厳しい。 海外3カ国に住んだことがあるが、他人に容姿のことで何か言われたことは一度も無かった。でも日本では容姿に対する心ない言葉を何度も浴びせられた。よっぽどの美人でない限り、デブとかブスと言われたことのある人が大半なの…

ラットマン 道尾秀介 レビュー ネタバレあり

人は自分が見たいように世界を見ている。 自分は恵まれていると思えば恵まれている部分がよく見えてくるし、自分は不幸だと思えば不幸な部分がよく見えてくる。 今作では人の思い込み、勘違いによって一つの出来事が人それぞれ色んな形で結論づけられていく…

私が失敗した理由は 真梨幸子 レビュー ネタバレあり

人の不幸は蜜の味。 特に自分の嫌いな人、成功者、上級国民なんて呼ばれるような人が転落する様は面白いものである。もちろんそんなこと口には出さないし、自分の心の中で思っているだけ。ましてや本人に直接言ったりSNSに書いたりはしない。それはもう知能…

出版禁止 長江俊和 レビュー ネタバレあり

フィクションなのか、ノンフィクションなのか。途中でわからなくなるほどに本に没頭した。もちろん最初はフィクションだと思って読み始めるのだが、構成の上手さにあれ?これって・・・なんて思い始めたり。本を読んでいるというよりも事件に関してのネット…

孤虫症 真梨幸子 レビュー ネタバレあり

誰にも共感できない。誰にも感情移入できない。だけど、真梨先生の作品はつい一気読みしてしまい、更に2周目にまで突入する。今作がデビュー作らしいが、デビュー作でよくこんな小説が書けるなと。 今作ではフリーセックスを楽しむ主婦の麻美の不倫相手が次…

ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人 東野圭吾 レビュー ネタバレあり

人は一度手にしたものを失うことを怖がる。お金、地位や名誉、高価な物。失ってもまた一から積み上げていけばいいと思えるほど人ってきっと強くないのでしょうね。そこまで達観できるのならそれはとても幸せなこと。 名もない小さな寂れた町で町おこしの計画…

冷たい校舎の時は止まる 辻村深月 レビュー ネタバレあり

高校生の時の悩みって何だったかな? 多分好きな男の子に気持ちを打ち明けようかと迷っただろうし、クラスの友人と喧嘩してしまって悩んだだろうし、思うように成績が伸びなくて悩んだだろうし、大学受験のことでも悩んだだろう。でも30も半ばになった今では…

最高のアフターヌーンティーの作り方 古内一絵 レビュー ネタバレあり

古内先生の作品を読んだ後は幸せでいつもボーッとしてしまう。今作も美しすぎる情景の描写にうっとりした。 桜山ホテルに勤める遠山涼音(すずね)は念願のアフターヌーンティーチームに異動になる。新しいアフターヌーンティーのメニューを企画するもシェフ…

不連続の世界 恩田陸 レビュー ネタバレあり

数ある物の中から何に注目するか。自分の持っている物に注目するのか、それとも持っていないことに注目するのか。そんな小さなことで人生が幸せに感じたり、不幸に感じたりもする。 人間の思い込み、思い違い、勘違い、目の錯覚によって見える世界が違う。な…

スロウハイツの神様 辻村深月 レビュー ネタバレあり

こんなに読後感の良い作品は久しぶりだ。 夢を追いながら共に刺激し合い、励まし合いながらスロウハイツで生活をする仲間達。漫画家の卵、画家の卵、監督の卵。皆それぞれクリエイティブな夢を持つ。頑張ったところで芽が出るかどうかは分からない。順調に行…

向日葵の咲かない夏 道尾秀介 レビュー ネタバレあり

本の裏表紙を見て、大体こんな感じのお話なのかな?と想像して読書を始める。 自分の思った通りのお話のこともあるし、違ったなと思うこともある。今作は思いっきり裏切られた。裏表紙を読むと、同級生が首を吊って死んだ真相を究明していく。名探偵コナンの…

家族趣味 乃南アサ レビュー ネタバレあり

日常に潜む狂気を描いた乃南先生の短編小説5編。明るい、楽しい小説よりも狂気じみた小説が好きだ。 魅惑の輝き主人公の有理子は大の宝石好き。きっかけは両親から贈られたダイヤモンドのネックレス。両親が、有理子が10歳になった時から1粒ずつダイヤモ…

カラスの親指 道尾秀介 レビュー ネタバレあり

詐欺の手口って面白い。 今作は詐欺を生業とする武沢とテツが主人公。詐欺を働いてお金を得て生活をしていく。悪いことだし、罰せられることなのにその手口が面白くクスリとさせる描写が最高。次はどんな詐欺を働くのかな?とちょっと楽しみになってきたとこ…

女ともだち 真梨幸子 レビュー ネタバレあり

友達って何だろう? 自分が友達と思っていても、相手はただの知り合い程度に思っているかもしれない。学生時代、仲の良い二人だなぁと思っていても実は二人のうちの片方が相手を嫌いだったり。特に女性同士の友達って難しいよね。 今作の登場人物は皆どこか…

5人のジュンコ 真梨幸子 レビュー ネタバレあり

どんな人と付き合うか。 子供の頃はどんな人と付き合うかは親の経済力によって左右される。住む地域によって住む人の民度は異なる、良くも悪くも。お金が全てではないが、経済的に恵まれている方が精神的にも安定する傾向にある。それはそうだ。日々の生活に…

フォルトゥナの瞳 百田尚樹 レビュー ネタバレあり

人が生きる意味って何だろう? お金をたくさん稼いで良い暮らしをするため?何か人の役に立つため?大きな功績を残すため?それができれば苦労しないけれど。 主人公の木山慎一郎は他人の死の運命が見える。死を目の前にしている人は透けて見えるのだ。しか…

夢にも思わない 宮部みゆき レビュー ネタバレあり

中学生の淡い恋愛ものなのかな?という期待を見事に裏切ってくれたこの作品が好きだ。 物語の初めは、主人公の緒方くん。お友達の島崎くんに、片想い中のクドウさんとの関係にいいなぁ、若いなぁ、かわいいなぁという思いで読んでいたのにまさかの殺人が起こ…

返事はいらない 宮部みゆき レビュー ネタバレあり

宮部先生の『火車』を読んだ時の衝撃は今でも鮮明に覚えている。消費者金融からお金を借り、返済できなくなって自己破産。その後別人になりすまして生活するという凡人には思い付かないような生活に衝撃を受けた。今作は『火車』の原型とも言える作品が掲載…

太陽の坐る場所 辻村深月 レビュー ネタバレあり

私は同窓会に行ったことがない。 そもそも同窓会って何のためにあるのだろう?旧友と思い出を共有するため?今の仕事に必要な人脈を作るため?成功した自分を自慢したいため?人それぞれ色々な考え方はあるだろうが、私は過去には興味がない。今幸せなら、今…

R.P.G 宮部みゆき レビュー ネタバレあり

ネット上の自分と現実の自分。どちらが本当の自分なのだろうか? ネットでは現実の自分を偽ることができる。性別、年齢、住んでいる場所、生い立ちから職業まで。大抵、誹謗中傷を書き込む人は現実世界では地味で目立たなく大人しい人だったりもする。自分に…

長い長い殺人 宮部みゆき レビュー ネタバレあり

小説の多くの語り手は自分、そして自分の身の回りの誰かだ。稀に動物が語り手のこともある。しかし!度肝を抜かれた。今作の語り手はまさかの『お財布』。 あたしはバッグの底で祈るしかなかった。彼女は働いてあたしを一生懸命膨らませようとしていた。 な…

プリズム 百田尚樹 レビュー ネタバレあり

こんなことって本当にあるのかな?と半信半疑に読んでいたはずなのに、どんどん先が気になって一気読みする。百田先生の『モンスター』もそうだった。 家庭教師として働く聡子。その家で不思議な男性と出会う。見た目は同じなのに、会う度に違う表情、違う名…

手紙 東野圭吾 レビュー ネタバレあり

差別を無くそう!人間皆平等。なんて言葉は誰が言い出したのだろう。そんな世の中あるはずないのに。普段私たちは生きていて、差別とは程遠いところにいる。あの人嫌いだな苦手だなと思っていても、表立ってその人を差別することはまず無い。だって大人だか…