mooncatの図書館

本が好きです。図書館に住みたい。読んだ本の感想文を書いています。

出版禁止 長江俊和 レビュー ネタバレあり

フィクションなのか、ノンフィクションなのか。途中でわからなくなるほどに本に没頭した。もちろん最初はフィクションだと思って読み始めるのだが、構成の上手さにあれ?これって・・・なんて思い始めたり。本を読んでいるというよりも事件に関してのネットニュースを読んでいる、そんな感じがした。

著者の長江俊和は出版禁止となった原稿を手にする。書き手は若橋呉成(わかはしくれなり)。内容は有名ドキュメンタリー作家熊切敏(くまきりさとし)とその秘書新藤七緒(しんどうななお)との心中事件について。二人は不倫関係にあった。心中事件では新藤七緒だけが生き残る。これは本当に心中だったのか?熊切は誰かに殺されたのではないか?その真相に迫っていく。

序盤から新藤七緒が怪しい。七緒が熊切を殺したんじゃないの?でもどうやって?若橋が七緒にインタビューする形式で話は進んでいく。うん、読みやすい。あれ?犯人は大物政治家の神湯堯(かみゆたかし)なの?と途中で思ってきたり。でも証拠のビデオを見ると確かに二人は心中してるんだよなぁ。うん。

後半は七緒と若橋が恋仲となり同棲生活を始める。もしかして七緒って男性を死に追い詰める魔性の女ってこと?本人にそのつもりはなくても、男性は七緒と関わったら狂っていくってこと?なんて色々と予想しながら読んだのに、その予想がことごとく外れていく。

序盤はゆっくりと物語が進んでいくのに対して、後半のスピード感よ!そして最後の一文が怖すぎた。あぁそうだったのね。最後まで読んで納得。

永津佐和子の刺客は新藤七緒。新藤七緒は永津佐和子の命で熊切を殺している。そして神湯堯の刺客、つまりカミュの刺客は若橋呉成。若橋は神湯の命で新藤七緒を殺している。しかしながら若橋は七緒を本気で愛してしまったから自殺という道を選ぶ。真相が分かった時のゾクゾク感が最高の一冊。その後に若橋のルポを読むとまた違った読み方ができたのが本当に本当に面白かった。

読後感は決して良くないし、むしろ怖い。後から後から怖さが増していく感じ。怖いけれど長江先生の禁止シリーズ色々と読んでみたい。