人面瘡 横溝正史 レビュー ネタバレあり
金田一耕助シリーズの5つの短編からなる今作。どの作品も秀逸で、全く飽きることがない。
眠れる花嫁
愛する妻が亡くなった後も、妻の遺体を側に置き愛し続けた男。その事件を発端とし、連続殺人事件が起こる。
猟奇的な性癖を持つ人の犯行だけに目が行きがちだが、最後に全てが計算されていたと知り驚いた。この短い文章でこんな展開を誰が予測できる?
湖泥
狭い村社会の典型例。
もう何百年前のことが今も続いているような人間関係が恐ろしい。ご先祖さま同士が仲が悪かったから、今でもその両家は仲が悪い。なんて馬鹿馬鹿しい話だとは思うが、村社会ではそれが現実。
そんな村社会で爪弾きにされてしまった者が起こす犯罪は村への恨みから来るもの。村社会での孤独と、いつまでこの生活が続くのかという絶望。狭い世界での人間関係の描写が秀逸。
蜃気楼島の情熱
女性の嫉妬。
自分より下だと思っていた人が、結婚を機に自分よりも遥かに良い暮らしをするようになった。許せない。何とか引き摺り落としたい・・・
表面上は仲良く見えていても女性の関係は分からないね。インスタ等SNSでセレブ自慢をしている方々は気をつけてね。
蝙蝠と蛞蝓
金田一耕助は側から見るとこんな感じに見えているのか。とクスリと笑わせてくれる作品。構成が面白く、短編でなく長編で読みたくなった。
結局人は見た目では判断できないってことか。
人面瘡
姉の幸せが許せないと、昔から姉の物を奪っては喜びを感じていた妹。姉は妹のすることに耐えつつ真面目に生きてきた。その妹が殺された。自分が殺してしまったのだろうか?と悩む姉。
真面目に生きていることを見ていてくれる人は必ずいるんだよね。人面瘡の謎も解け、結末も良かった。
どの作品も良作だが、個人的には『蝙蝠と蛞蝓』が一番好き。