mooncatの図書館

本が好きです。図書館に住みたい。読んだ本の感想文を書いています。

フォルトゥナの瞳 百田尚樹 レビュー ネタバレあり

人が生きる意味って何だろう?

お金をたくさん稼いで良い暮らしをするため?何か人の役に立つため?大きな功績を残すため?それができれば苦労しないけれど。

主人公の木山慎一郎は他人の死の運命が見える。死を目の前にしている人は透けて見えるのだ。しかし、自分の死の運命は見えない。慎一郎は死を目前にしている人を見ては助けたいと思う。しかしながら一人の人を助けたことで、他人に運命を変えてしまっていることに気付く。そして死を目前にした人を助けることで自分の体が蝕まれていく。

慎一郎が他人のことを思うあまりに自分を犠牲にすることが多く、読んでいて辛いことが多かった。自分さえ良ければいいということではなく、生きている限り誰しも幸せになる権利はあるし、それを邪魔する権利は誰にもない。慎一郎に辛い生い立ち、過去があることは周知の事実だがもっと貪欲に自分の幸せを追求して欲しかった。幸せになる勇気を持って欲しかった。

恋人の葵がいるのだから、彼女のために生きるという選択肢はなかったのかな?葵も同じ瞳を持つ者だと告白していれば違った人生があったのではないだろうか?と読んでいてもどかしくてモヤモヤが募るばかり。生きる意味なんて無くてもいい、好きな人、大切な人がいるから生きる、それでいいんじゃないかな。慎一郎の選択はもちろん尊いけれど、葵のことを思うと苦しくて涙が止まらなかった。

大きなことをしなくてもいい。すごくなくてもいい。ただただ生きていく。それだけでいい。また数年後に読んだら思うことは違うのだろうか。百田先生の本はどれもジャンルが違って面白い。