mooncatの図書館

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5人のジュンコ 真梨幸子 レビュー ネタバレあり

どんな人と付き合うか。

子供の頃はどんな人と付き合うかは親の経済力によって左右される。住む地域によって住む人の民度は異なる、良くも悪くも。お金が全てではないが、経済的に恵まれている方が精神的にも安定する傾向にある。それはそうだ。日々の生活に困るほど困窮しているのなら、他人のことを思いやる余裕なんて生まれるはずがないのだから。

今作は、伊豆連続不審死事件の犯人とされる佐竹純子の中学時代の同級生篠田淳子の物語から始まる。周囲からは親友と思われていたが、佐竹純子が篠田淳子を支配下に置くという上下関係から成り立つ関係であった。

その他に出てくるジュンコ達もまた、誰かを支配したり、誰かに支配されたりという歪な関係から抜け出せないでいる。田辺絢子に関しては久保田芽依に支配されていることにも気付いていなさそうで、それがまた怖い。してもいない殺人の罪を被る必要あるかな?

福留順子の章の恵原さんはゾッとした。嫌うのならいつも娘の世話を押し付けてくる蒲田里穂子の方じゃないのかな?と思っていたけれど、実は順子に支配されていると思い込んでいたんだね。蒲田里穂子は順子と恵原さんを支配下に置き、順子は恵原さんを支配下に置く。どこも対等ではない歪な関係。夫の会社内での序列がそのまま奥様の地位を決めてしまう社宅って恐ろしいね。

そして、佐竹純子は出会い系サイトの高千穂くららだと思い込んでずっと読んでいたのにまさかのどんでん返し!まさかのまさかの篠田淳子だというオチ。あぁ本当真梨先生のミスリードすごい。大好きだ。淳子は純子と出会って転落人生を歩み続けるわけではなく、自力で正社員になって頑張ってるんだなぁと思っていたのにまさかの詐欺や殺人まで犯していたのか。

どんな人と付き合うかによって人生良くも悪くも変わる。おかしいと思うことでも、周りにいる人がおかしいことを普通にしていたらそれは普通になるわけ。色んな人と出会って、傷つけたり、傷つけられたりするんだけどその中で自分の考え方をしっかり確立していく。そうすれば誰かを支配することもないし、支配されそうになったら逃げることもできる。

5人のジュンコ皆に欠けていたものは自信。自信がないから誰かを支配したくなる。マウントを取りたくなる。卑屈になる。自分の力を誇示したくなる。どのジュンコも好きになれなかったけれど、このドロドロした人間の醜悪な部分を読むのは楽しかった。