mooncatの図書館

本が好きです。図書館に住みたい。読んだ本の感想文を書いています。

2022-01-01から1年間の記事一覧

月光 誉田哲也 レビュー ネタバレあり

月光 (中公文庫) 作者:誉田 哲也 中央公論新社 Amazon 何度も読むのを辞めようと思いつつ最後まで読んでしまった。読むのが辛い、けれどどう決着がつくのか気になる。ただ私はこの本を誰かにお薦めはしない。 どんなに真面目に生きていても思いもかけないこ…

とり残されて 宮部みゆき レビュー ネタバレあり

とり残されて (文春文庫) 作者:宮部 みゆき 文藝春秋 Amazon ゴールデンウィークは本をたくさん読もうと決めて読んだ一冊。短編なのにグッと引き込まれる作品ばかりだった。 とり残されて 婚約者を事故で亡くした女性。事故を起こした犯人は未成年で大した罪…

人面瘡 横溝正史 レビュー ネタバレあり

人面瘡 金田一耕助ファイル 6 (角川文庫) 作者:横溝 正史 KADOKAWA Amazon 金田一耕助シリーズの5つの短編からなる今作。どの作品も秀逸で、全く飽きることがない。 眠れる花嫁 愛する妻が亡くなった後も、妻の遺体を側に置き愛し続けた男。その事件を発端…

悪魔のトリル 高橋克彦 レビュー ネタバレあり

悪魔のトリル (祥伝社文庫) 作者:高橋 克彦 祥伝社 Amazon 図書館での本との出会いは楽しい。今作はその中の一冊。裏表紙に書かれていた『怪奇世界の魅力六篇』という言葉に惹かれて借りてきた。 眠らない少女 父、母、娘のいたって普通の家族、その中の娘が…

犬神家の一族 横溝正史 レビュー ネタバレあり

犬神家の一族 金田一耕助ファイル 5 (角川文庫) 作者:横溝 正史 KADOKAWA Amazon 良い文章を読んだなといつも思う。横溝正史作品の文章は美しく品がある。殺人は起こるけれども。 『犬神家の一族』は有名すぎるほど有名なのに初読み。昭和47年に初版が発刊…

昨日がなければ明日もない 宮部みゆき レビュー ネタバレあり

昨日がなければ明日もない 作者:みゆき, 宮部 文藝春秋 Amazon 杉村三郎シリーズ第五作目。 相変わらず社会の闇と戦う杉村だが、今回のテーマは“ちょっと困った女性たち”。いや読後に思ったことは、ちょっとどころではないよ!こんな困った人が周りにいたら…

悪魔が来りて笛を吹く 横溝正史 レビュー ネタバレあり

悪魔が来りて笛を吹く (角川文庫) 作者:横溝 正史 KADOKAWA Amazon 横溝先生の本を読み終わった後はいつも、良い文章を読んだなと思う。 今作は金田一耕助シリーズの中の一つ。没落した旧華族のドロドロした人間関係が描かれている。繁栄していた頃を忘れら…

小暮写眞館 宮部みゆき レビュー ネタバレあり

小暮写眞館 上下巻セット 講談社 Amazon 「小さい子供が死ぬなんて、あっちゃならないことだから。おっかないことだからね。誰か責任者をつくらないと腹が収まらなくって、言いたいこと言う連中はいるんだよ」 (下巻p331) 小さい子供が死んだなんてニュー…

獄門島 横溝正史 レビュー ネタバレあり

獄門島 (角川文庫) 作者:横溝 正史 KADOKAWA Amazon 死んだ戦友、鬼頭千万太の遺言を託されて獄門島に行った金田一耕助。 獄門島。かつて流刑の地とされていた島。 そこに住む戦友の三人の妹が殺されるという遺言を残して逝った千万太。そして実際に獄門島で…

来なけりゃいいのに 乃南アサ レビュー ネタバレあり

来なけりゃいいのに (祥伝社文庫) 作者:乃南アサ 祥伝社 Amazon 『普通』であることが無意識に求められる日本。そんな一見普通に見える女性が主人公である乃南アサ先生の7つの短編集。 熱帯魚 今の職場に満足していない響子は憧れていたアパレルメーカーに…

本陣殺人事件 横溝正史 レビュー ネタバレあり

本陣殺人事件 (角川文庫) 作者:横溝 正史 KADOKAWA Amazon 横溝正史。ミステリー好きな人で知らない人はいないだろう。とはいえ、私が横溝先生の作品を手に取ったのはつい最近のことで、トリックはもちろんのこと文章の美しさにはまってしまった。 今作には…

あやし 宮部みゆき レビュー ネタバレあり

あやし―怪 作者:宮部 みゆき 角川書店 Amazon 昔の人は、霊やら迷信やらを信じていたらしい。 時は江戸時代。科学も医療も発達していない時代だからこそ霊やら迷信が信じられていたのだろう。 今作は9作の短編集からなる。どれも霊、鬼、病がキーワードとな…

希望荘 宮部みゆき レビュー ネタバレあり

希望荘 (文春文庫) 作者:みゆき, 宮部 文藝春秋 Amazon 今作は杉村三郎主役の第四作目。一作目から三作目はこちら。 誰か―Somebody (文春文庫) 作者:みゆき, 宮部 文藝春秋 Amazon 名もなき毒 (文春文庫) 作者:みゆき, 宮部 文藝春秋 Amazon ペテロの葬列 作…

ペテロの葬列 宮部みゆき 読了 ネタバレあり

ペテロの葬列 作者:宮部 みゆき 集英社 Amazon お金が欲しい。 人にすごいと思われたい。自分を馬鹿にしていた人たちを見返してやりたい。目立ちたい・・・ と、人間には欲がある。 『お金が欲しい』 ほとんどの人間がこう思っているのではないだろうか? お…

お引っ越し 真梨幸子 レビュー ネタバレあり

お引っ越し (角川文庫) 作者:真梨 幸子 KADOKAWA Amazon お引っ越し。 そう言えば私は今に至るまで数えてみると18回もお引っ越しをしている。中にはやばい家もあって、すぐに引っ越したこともあるがそれも良い思い出。 家は自分が帰る場所。くつろげる、心安…

ご用命とあらば、ゆりかごからお墓まで 万両百貨店外商部奇譚 真梨幸子 レビュー ネタバレあり

ご用命とあらば、ゆりかごからお墓まで 万両百貨店外商部奇譚 (幻冬舎文庫) 作者:真梨 幸子 幻冬舎 Amazon お客様は神様。 なのだろうか? お金を払っているんだから。こっちは客なんだから。と言い出す人のほとんどは貧乏人。貧乏人ほど少しのことにクレー…

作家小説 有栖川有栖 レビュー ネタバレあり

作家小説 作者:有栖川有栖 幻冬舎 Amazon 『作家』という職業に就いている人に関する8つの短編集。 書く機械(ライティング・マシン) 売れっ子と呼ばれ、ベストセラーを連発するような作家はいかにして作られるのか。 敏腕編集者の藤原はパッとしない新人…

5年目の魔女 乃南アサ レビュー ネタバレあり

5年目の魔女(新潮文庫) 作者:乃南 アサ 新潮社 Amazon 女性の勘は当たると思う。なんとなくこの人やばいな、なんとなくこの場所居心地悪いな・・・ このうまく言えない“なんとなく”は人間の本能だから無視すると大変なことになる。 主人公の景子はOLをして…

八つ墓村 横溝正史 レビュー ネタバレあり

八つ墓村 (角川文庫) 作者:横溝 正史 KADOKAWA Amazon ミステリー好きとしては必ず読んでいるはず?の横溝正史作品。自らが読んでいないことに衝撃を受け、とりあえず有名どころから読んでみた。 戦国の時、欲に目が眩んだ村民たちに8人の武者が惨殺される…

岬にて 乃南アサ レビュー ネタバレあり

岬にて: 乃南アサ短編傑作選 (新潮文庫) 作者:乃南 アサ 新潮社 Amazon 岬にて 杦子(すぎこ)には二人の娘がいるが、二人とも独立している。夫と二人暮らしだが、夫とは大した会話もない。 『ママって、パパとつきあう前にも、誰かつきあってた人って、いる…

クレオパトラの黒い溜息 小峰元 レビュー ネタバレあり

クレオパトラの黒い溜息 作者:小峰 元 講談社 Amazon 亡き父が小峰元先生の大ファンで、自宅には小峰先生の本がたくさんあった。クレオパトラの黒い溜息、ピタゴラス豆畑に死す、アルキメデスは手を汚さない。どれも小学生の頃に読んだがイマイチ内容が理解…

ツキマトウ 真梨幸子 レビュー ネタバレあり

ツキマトウ 警視庁ストーカー対策室ゼロ係 (角川文庫) 作者:真梨 幸子 KADOKAWA Amazon 誰が被害者で誰が加害者なのか。見る視点を変えると同一人物が被害者にも加害者にもなりうる。 今作も真梨幸子先生らしく多くの登場人物が微妙に絡み合っていて、そこを…

誰か 宮部みゆき レビュー ネタバレあり

数年前に読んだ本なのに内容を完全に忘れてしまっていた。当時私がどういう感想を持ったのかは覚えていないが、今回再読して心揺さぶられたシーンがいくつもあった。 “誰か” この表題の意味は何なのだろう。読み終えた後にp.402に戻る。 人は一人では生きて…

それは秘密の 乃南アサ レビュー ネタバレあり

人に恋をするという感情を表現することは難しい。 そんな感情を描いた乃南先生の9つの短編集。 ハズバンズ 美容に執着する元妻がお金をせびりにやってきた。外見に捉われるばかりに中身はスカスカ。ついついお金を渡してしまうが、現夫が後から返済しにくる…

恋愛禁止 長江俊和 レビュー ネタバレあり

本当に人を愛するとはどういうことなのか。 好きだから相手に暴力をふるう。これは愛ではなくてただの支配。暴力とは力の暴力も言葉の暴力も含む。だからもし、お付き合いしている相手から暴力をふるわれている方がいたらそれは愛されているのではなく支配さ…

人生相談 真梨幸子 レビュー ネタバレあり

悩んだ時は誰かに聞いてほしい。アドバイスしてほしい。大きな問題であればあるほど、身近な人より赤の他人に聞いてもらった方が気持ちが楽になるかもしれない。今日も大洋新聞の“よろず相談室”には様々な悩みが届く。 今回も登場人物が多くて混乱したけれど…

深く深く、砂に埋めて 真梨幸子 レビュー ネタバレあり

もしあの時こうしていたら・・・ なんてことを考えたことはないだろうか。 でもきっと過去に別の選択をしていても結果は今と同じか、またはもっと悪いものだったのだろう。 今作は圧倒的美女、野崎有利子(のざきゆりこ)の存在によって人生が狂っていった男…

禁忌装置 長江俊和 レビュー ネタバレあり

人は死んだらどうなるのだろうか。 肉体は滅びても魂だけは残るのか。何かに生まれ変わるのか。死者に直接聞くこともできないし、生きている者が知るすべは無い。だからこそ人は死を恐れ、敬意すら抱く。死後の世界は全貌が分からないからこそ魅惑的だ。 と…

再生の朝 乃南アサ レビュー ネタバレあり

人は皆それぞれ何かしら事情がある。幸せそうに見えても本当のところは誰にも分からない。 恋人に別れを告げられた人、今までの自分の殻を破りたい人、夢破れた人、結婚生活が破綻した人、会社が倒産の危機にある人・・・そんなそれぞれの事情を抱えた人が同…

夜中にジャムを煮る 平松洋子 レビュー ネタバレあり

食がテーマの本が好きだ。 食は楽しい。 目で楽しみ、香りを楽しみ、味を楽しみ、音を楽しみ、舌触りを楽しむ。まさに五感を使う行為。器や調理器具もこだわり出すとキリがない。 『夜中にジャムを煮る』題名からして好き。大量にいただいた果物。はて、食べ…