mooncatの図書館

本が好きです。図書館に住みたい。読んだ本の感想文を書いています。

昨日がなければ明日もない 宮部みゆき レビュー ネタバレあり

 

杉村三郎シリーズ第五作目。

 

相変わらず社会の闇と戦う杉村だが、今回のテーマは“ちょっと困った女性たち”。いや読後に思ったことは、ちょっとどころではないよ!こんな困った人が周りにいたら人生破壊される。というか、周りはみんな人生破壊されているんだけどね。

 

収録されているのは三作品。どれも胸糞が悪くなるような作品だけど、私は“絶対零度”が最高に気分が悪かった。人間の尊厳を踏み躙る人ばかりが登場する。どの人(人として表現していいのか?)も最低で、被害者には何の落ち度も無い。傷つけられていい人間なんていないけれど、殺害された高根沢は殺されて当然の人物。何ならもっと苦しみながら死んで欲しかった・・・

 

佐々優美も、もうこれはどうしようもない人物。女性なら、同じ女性なら田巻郁恵を助けるよね。怖くて助けられなくても、犯罪を手引きするような真似はしないよね。生きていて恥ずかしくはないのかな・・・。

 

〇〇さえしなければ良い人

 

〇〇をするからその人はダメな人だ。なんて描写が出てきて納得。お酒さえ飲まなければ、愚痴さえ言わなければ、なんてね。

 

冷たい言い方だけど、人はそんなに簡単に変われない。自分で気付いて、変わりたいと思って努力するから変わることができる。大好きなあの人に変わってほしい!と期待しても大抵無駄なので、違和感を感じるのなら距離を置くのが正解かな。優美はそれができずに“トモ君”と結婚してしまったんだね。

 

絶対零度”の印象が強すぎて後の二作品が霞むレベルだったけれど、人の嫌な部分がじわりじわりと描かれていて今作もとても楽しめた。人間だから良い部分だけを持ち合わせているわけではないし、その中で人の優しさに触れると何だか感動する。次作もありそうな展開なので楽しみに待とうと思う。