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悪魔が来りて笛を吹く 横溝正史 レビュー ネタバレあり

 

横溝先生の本を読み終わった後はいつも、良い文章を読んだなと思う。

 

今作は金田一耕助シリーズの中の一つ。没落した旧華族のドロドロした人間関係が描かれている。繁栄していた頃を忘れられない。贅沢を辞められない、自分の欲求を止められない、そんな愚かな人々の犠牲になった人の復讐劇。

 

死体に細工があったりという派手な演出は無いのに、だからこそ現実味があってゾッとした。金田一耕助が小さなヒントを手がかりに真実の糸を手繰り寄せた途端に、その糸が切れてしまったりとモヤモヤしつつも先が気になる。でも読み終えてしまうのが惜しいと感じるほど素晴らしい作品だった。

 

昭和48年に出版された作品。今とは時代背景が全く違うけれど、昔の闇を垣間見ている感じがまた面白い。家族間の距離、親戚間の距離が近く、今の時代ではなかなか無い距離間。だからこそ近親相姦のようなことも多々あったのだろう。

 

あまりにも素晴らしい作品で個人的には八つ墓村や本陣殺人事件よりも今作が好きだ。

 

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それにしても新宮利彦はとんでもない男だったね。