mooncatの図書館

本が好きです。図書館に住みたい。読んだ本の感想文を書いています。

名前探しの放課後 辻村深月 レビュー ネタバレあり

 

3ヶ月後に同級生が自殺をする。それを止めるために3ヶ月後から戻ってきた。あれ?読んだことある?なんとなく辻村先生のデビュー作『冷たい校舎の時は止まる』に設定が似てるなぁというのが最初の印象。

 

mooncatbooks.hatenablog.com

 

同級生の自殺を止めるため、依田いつかは今まであまり話したことのなかった同級生たちと交流をはかりXデーを回避しようと協力する。あぁ、眩しい高校生たち。と親目線で読み始めたのに、なぜか私も気持ちは高校生に戻りなんとかして同級生の自殺を食い止めたいと思う。完全に本の中の登場人物の一人となった。いじめに遭っている同級生に自信をつけさせるために、放課後を共に過ごす。水泳を教えたり、勉強したり。その中で一人一人が成長していく姿がとても眩しかった。

 

ここでふと我に返る。辻村先生の作品で注目すべきところは登場人物の“名前”。カタカナだったり、姓か名かどちらかしか出ていない人物は要注意人物だ。今作では“椿”だ。椿はずーっと椿としか表現されていない。椿が苗字なのか名前なのか。女の子だから名前と見せかけていて実は苗字なんじゃないかな?と思いながら読んでいたら案の定!しかもしかもしかも『ぼくのメジャースプーン』の彼女ではないか!それなら長尾くんもそうだよね?と、辻村先生の作品は所々に別の作品の登場人物が出てくるから面白い。

 

mooncatbooks.hatenablog.com

 

スロウハイツの神様のチヨダコーキの名前も出てきて嬉しくなったり。

 

mooncatbooks.hatenablog.com

 

登場人物のその後ってすごく気になるし、みんなそれぞれ成長して幸せであってほしいって思うからみんなに再会できた気分。何よりも一番びっくりしたのは長尾秀人が“あの力”を依田いつかに使っていたこと。そしていつかは自分の気持ちとしっかり向き合い、自分の未来を変えたこと。え?と声が出るほどびっくりした。最後は案の定号泣。あすなとおじいちゃんとの関係、感謝を言葉で伝えたシーンは本当に良かった。

 

完璧じゃなくていい、上手じゃなくていい、でも途中でやめてしまったことで少しでも心にしこりが残っていることがあるのならまたやり直してもいいんだ。年齢なんて関係ないし、自分が納得いくまで。