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ツナグ 想い人の心得 辻村深月 レビュー ネタバレあり

 

作中の登場人物が皆幸せであればいいと思う。だから、数年後皆がどう生きているのかを知れるのは嬉しい。今作は『ツナグ』の続編。主人公の歩美の7年後が知れたのが嬉しかった。

 

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ツナグ。

 

死者との再会を叶える役目。もし会えるのなら誰に会うのだろう?そして何を伝えたいのか、何と言ってもらいたいのか。

 

ツナグの役目を祖母から受け継いだ歩美の7年後、歩美は社会人として働いている。仕事を通して出会う人々。ツナグを通して出会う人々。忙しい毎日の中に充実感を見出している歩美を知れたことが嬉しい。

 

今作でも死者に会いたいと連絡をしてくる人は様々だ。子供を亡くした親、歴史上の人物に会いたい研究者。憧れていた人に会いたい人。胸がつまる描写もあれば、思わず笑顔になれる描写もある。

 

特に私が印象に残ったのは『想い人の心得』の蜂谷さん。40代の頃からずっと会いたいと思い続け85歳になってやっと会うことができた想い人。何度断られてもツナグに連絡をし続けた。想い人である絢子さまの大好きだった桜の季節に、桜の見える場所で会うことが叶った。

 

自分の思いを叶える、伝えるというよりも若くして亡くなった相手のことを思っての心遣いに胸がいっぱいになった。絢子さまが亡くなった後、皆がそれぞれの道を行く中で絢子さまのことを大切に思っていたこと。それを伝えるためにツナグと連絡を取り続けた蜂谷さん。もう自分の人生が長くないと悟った時でさえ相手のことを思い続ける・・・人間の本当の幸せって、誰かのために何かをしたいと思うところにあるのかな。

 

プロポーズの心得では、前作の親友の心得で登場した嵐の7年後も知ることができて嬉しかった。心の中にわだかまりや後悔を持って生きていること、それでも役者という仕事をしていること。孤独に苛まれる時間も多いようだが、支えてくれそうな男性が近くにいる。嵐には、どんな後悔があっても幸せになる勇気を持ってほしいな。

 

生きる。生きていく。失敗も後悔もあるけれど、その中でどう生きていくのか。そんなことを考えさせてくれる作品だった。続編が出るといいな。