mooncatの図書館

本が好きです。図書館に住みたい。読んだ本の感想文を書いています。

太陽の坐る場所 辻村深月 レビュー ネタバレあり

私は同窓会に行ったことがない。

そもそも同窓会って何のためにあるのだろう?旧友と思い出を共有するため?今の仕事に必要な人脈を作るため?成功した自分を自慢したいため?人それぞれ色々な考え方はあるだろうが、私は過去には興味がない。今幸せなら、今の生活を大切にしたいし、今の人間関係を大切にしたい。自分の大切な人にだけ時間もお金も使いたい。だから同窓会には行かない。

学生時代を思い出すと、色々と嫌なことはあったかもしれないが良い思い出しかない。中高通して割と誰とでも仲良くできる方だった。嫌いなクラスメイトもいなかったし、合う合わないは多少あれども合わない人とはそれなりに距離を取って接すればいいだけ。つまり私は学生時代からあまり他人に興味がない人間だったのかと思う。

今作は高校卒業10年後のクラス会が舞台。有名女優になった人、銀行員、地方局のアナウンサー、フリーのウェブデザイナー、主婦とそれぞれ違う道を歩んでいる。どの道が良いとか悪いとかは無い。けれど、有名女優になったクラスメイトなんてすごいなぁと誰もが思うし嫉妬する人もいれば、その立場を利用しようとする人もいる。高校時代もそうだよね。この子といれば自分の立場が良くなる、悪くなるという打算の元で仲良くする子を決める。

有名女優になったキョウコを何とかクラス会に出席させようとするクラスメイト達。同じ教室という空間にいたにもかかわらず、見え方は人によって全然違う。その描写が面白く一気読みしてしまった。それにしても辻村先生のトリックというか読ませ方はすごいよね。殺人とか自殺とか大きな事件が起こっていないにもかかわらず、巧妙に仕掛けられた名前のトリック。普通に読んでいたら、りんちゃんは浅井倫子だよね。そして、女王様のキョウコが大女優になったと思いきやまさかのね。

この名前のトリックに気づいた時にはハッとしたし、思わず人物相関図を書いた。そうかぁ、みっちゃん=浅井倫子、鈴原今日子=りんちゃんだったのね。

同窓会に行ったことはないけれど、行ったら多分クラスメイト達と比べちゃうんだろうな。自分の方がお金持ちだとか、幸せだとか、良い物持っているとかそんなことどうでもいいことだけれど、人と比べないなんて無理な話。人は絶対変わって行くし、昔人間関係で失敗したからといってそれがずっと続くわけではない。

過去に囚われていたクラスメイト達がそれぞれ自分と向き合い、それぞれの道を模索していく様は読んでいて応援したくなるし心地の良いものだった。個人的には半田聡美の今後が気になるな。自分がやり切ったと思うところまで劇団員でいるのもいいし、もしかしたら花開くときが来るかもしれない。続編が読みたい。