mooncatの図書館

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R.P.G 宮部みゆき レビュー ネタバレあり

ネット上の自分と現実の自分。どちらが本当の自分なのだろうか?

ネットでは現実の自分を偽ることができる。性別、年齢、住んでいる場所、生い立ちから職業まで。大抵、誹謗中傷を書き込む人は現実世界では地味で目立たなく大人しい人だったりもする。自分に自信がないから顔が見えない匿名性の高い場所では大きな行動ができるのだ。

さて、ネット上のSNS掲示板など人の集まる場所では必ず人間関係が発生する。会ったことはないけれど、なんとなくこの人好きだな、苦手だな。お話ししていると落ち着くななどと思ったことのある人は多いのではないだろうか。今作ではネット上で擬似家族が構成される。お父さん、お母さん、娘、息子の4人家族だ。血の繋がった家族には言えないことでも、擬似家族には言える。血の繋がった家族は自分には関心がないけれど、擬似家族はいつでも温かく迎えてくれる。こうなると血の繋がりって何なのだろう?

日本ではなぜか血縁関係や家と家の繋がりがとても重要視される。家族なのだから、親戚なのだから・・・だから何?血の繋がりがあっても合う合わないがあるし、無理に仲良くする必要はない。場合によっては離れた方が幸せなことも多々ある。でもふとした瞬間に家族の温もり、人との関係が恋しくもなる。こんな時ネットって便利だね。一瞬だけど手軽に心の隙間を埋めてくれる。

今作ではそんな擬似家族のお父さんが何者かに刺殺される。ネット上の擬似家族が犯人なのか?それとも現実世界のお父さんの身の回りの人が犯人なのか?犯人は結構意外であ、そうなの?というのが率直な感想。実は今作を読むのは二度目ではあるが、すっかりストーリーも犯人も忘れていた。複数箇所を刺されていたことから犯人はある程度絞れたなとは思うが、全く意外な人物だった。

子供は親を選べない。でも今の時代、結婚する相手は選べるよね。好きで結婚したのにどうして相手を見なくなるのだろう。どうして簡単に裏切ることができるのだろう。そして、どうして裏切られても仕方ないと諦めるのだろう。と所田家を見て思うがよその家庭のことは誰にも分からないということだろうか。結局一番の被害者は所田家の娘、一美かな。

最後、取調室に来た擬似家族のお母さん、カズミ、ミノルは実は警察官が芝居をしていたというのにはびっくり。こういうびっくりがあるから宮部先生の作品は本当面白いね。久しぶりに『火車』や『レベル7』も読みたくなった。