mooncatの図書館

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犬神家の一族 横溝正史 レビュー ネタバレあり

 

良い文章を読んだなといつも思う。横溝正史作品の文章は美しく品がある。殺人は起こるけれども。

 

犬神家の一族』は有名すぎるほど有名なのに初読み。昭和47年に初版が発刊されているから、今とは時代背景も全然違うのに面白いから不思議だ。

 

莫大な遺産を残して犬神佐兵衛が亡くなった。遺言書を見てみると意外な人物に有利なことばかりが書いている。財産を巡っての家族間の諍いほど醜いものはない。お金が欲しいという人間の欲求は今も昔も変わらないんだね。

 

いかにして自分が、自分の子供が有利になるのかばかりに目が行き、腹の底を探りあう松子、竹子、梅子の描写が醜い。お金が絡むと人間の本性が出る。そこがまた面白い。

 

犬神佐兵衛と野々宮大弐、その妻の春世との三角関係には驚いたし、考えるとゾッとする。まぁ他人の家庭のことだからあれこれ言えないけれど、この時点であの恐ろしい連続殺人が起こることが決まっていた感じがする。

 

松子、竹子、梅子が性悪女みたいに描かれているけれど、彼女たちも気の毒だよね。本当の父に愛してもらえず邪険にされ、その恨みが青沼菊乃に行ってしまう。当然じゃない?せめて遺言書の内容が違っていれば・・・そもそも莫大な財産さえ無ければ・・・なんて思わずにはいられなかった。

 

昔ながらの濃密な家族、親戚間の人間関係のドロドロが面白く、また犯人を想像するのが楽しく一気読み。金田一耕助のバリバリモジャモジャと頭をかく癖もなんだか好きになってきた。