悪魔のトリル 高橋克彦 レビュー ネタバレあり
図書館での本との出会いは楽しい。今作はその中の一冊。裏表紙に書かれていた『怪奇世界の魅力六篇』という言葉に惹かれて借りてきた。
眠らない少女
父、母、娘のいたって普通の家族、その中の娘が全然眠らない。何かの病気?もしかしてこの世のものではないとか?なんて思いつつ読んでいたら、輪廻転生のお話。今繋がりの深い人とは生まれ変わる前も繋がりが深かった人だなんてことを何処かで聞いたような気もするが、これは悪い運命の巡り合わせだった。
読んでいた絵本のことから、父が昔聞いた昔話になり、今現在に引き戻される。怖かった!
妻を愛す
倦怠期の夫婦が、二人の仲を昔のようにしたいと願い旅行に行く。そんなお話かと思っていたら意外な展開に!不思議だけど切ないお話に胸がつまる。
悪魔のトリル
『衛星博覧会』なるものが昔存在していた。『正しい性教育と防犯』という名目で性病に犯された性器や殺人現場などを蝋人形を使って表現するもの。昭和40年頃には廃れていったが、大変な人気を博したらしい。人間の怖いもの見たさを刺激する博覧会だったのだろう。
そんな衛星博覧会の特別室で昔見た美少年のバラバラ死体。微かに血の匂いもしたような気がしたが、良くできた作品だった。
梶間老人の話で美少年のバラバラ死体の真相が分かり、サーッと鳥肌が立った。六作品の中で一番怖く、一番好き。
卒業写真
30年ぶりに会う同級生の誰もが自分のことを覚えていない?先生すらも?
と、なんだか怖い異次元の話なのかな?と読み進めるも、最後はホッとするような終わり方。思い出は曖昧なままでいいのかもしれない。
陶の家
ドールズ・ハウスのお話。子供の頃シルバニアファミリーの赤い屋根の大きなお家が欲しくてたまらなかったなぁとワクワクしながら読んだ。欲しかったよ、シルバニアファミリー。懐かしいよね。
ドールズ・ハウスの精巧さに魅了されて人生が狂っていくのかな?と予測しつつ、まさか最後そうなるの?そして主人公の過去の悪事まで・・・
シルバニアファミリーを思い出している場合ではなかったオチ。
飛縁魔
え?え?となり、最後のオチまでゾーッと怖い。訪ねてきたゆう子さんの描写が無いところがまたにくい。ゆう子さんにお会いしたかった。
どの作品もとても面白く、ゾワゾワするものもあれば心が温かくなるものもあり。でも私はやっぱり表題作の『悪魔のトリル』が好き。