2021-07-01から1ヶ月間の記事一覧
人が生きる意味って何だろう? お金をたくさん稼いで良い暮らしをするため?何か人の役に立つため?大きな功績を残すため?それができれば苦労しないけれど。 主人公の木山慎一郎は他人の死の運命が見える。死を目の前にしている人は透けて見えるのだ。しか…
中学生の淡い恋愛ものなのかな?という期待を見事に裏切ってくれたこの作品が好きだ。 物語の初めは、主人公の緒方くん。お友達の島崎くんに、片想い中のクドウさんとの関係にいいなぁ、若いなぁ、かわいいなぁという思いで読んでいたのにまさかの殺人が起こ…
宮部先生の『火車』を読んだ時の衝撃は今でも鮮明に覚えている。消費者金融からお金を借り、返済できなくなって自己破産。その後別人になりすまして生活するという凡人には思い付かないような生活に衝撃を受けた。今作は『火車』の原型とも言える作品が掲載…
私は同窓会に行ったことがない。 そもそも同窓会って何のためにあるのだろう?旧友と思い出を共有するため?今の仕事に必要な人脈を作るため?成功した自分を自慢したいため?人それぞれ色々な考え方はあるだろうが、私は過去には興味がない。今幸せなら、今…
ネット上の自分と現実の自分。どちらが本当の自分なのだろうか? ネットでは現実の自分を偽ることができる。性別、年齢、住んでいる場所、生い立ちから職業まで。大抵、誹謗中傷を書き込む人は現実世界では地味で目立たなく大人しい人だったりもする。自分に…
小説の多くの語り手は自分、そして自分の身の回りの誰かだ。稀に動物が語り手のこともある。しかし!度肝を抜かれた。今作の語り手はまさかの『お財布』。 あたしはバッグの底で祈るしかなかった。彼女は働いてあたしを一生懸命膨らませようとしていた。 な…
こんなことって本当にあるのかな?と半信半疑に読んでいたはずなのに、どんどん先が気になって一気読みする。百田先生の『モンスター』もそうだった。 家庭教師として働く聡子。その家で不思議な男性と出会う。見た目は同じなのに、会う度に違う表情、違う名…
差別を無くそう!人間皆平等。なんて言葉は誰が言い出したのだろう。そんな世の中あるはずないのに。普段私たちは生きていて、差別とは程遠いところにいる。あの人嫌いだな苦手だなと思っていても、表立ってその人を差別することはまず無い。だって大人だか…
乃南アサ先生の警察官ものと言えば音道貴子シリーズが好きだ。この小説のどこかに出てくるのでは?と期待していたのだが、そんな期待を忘れるほどに監察官という組織が興味深かった。監察官とは警察官を取り締まる組織。そりゃ、警察官だって人間だから悪事…
昨日の芥川賞受賞発表に合わせて、蹴りたい背中を読んだ。蹴りたい背中が芥川賞を受賞したのが18年も前ということに驚いた。 誰もが口にすることはないがスクールカーストというものは存在する。今作はスクールカーストの表現がとても緻密で、そういえばそん…
島国だからだろうか。日本は血縁関係や家をとても大切にする。 好きで個人と個人が結婚するのに、結婚式では○○家、××家と謎の表記がされたりもする。個人の結婚なのに家と家が繋がるような変な風習だと私は思う。 さて、今作では子供を望むのに子供を授から…
パンドラの箱を開けてしまった。 人には知らなくていいことがある。いや、知らない方が幸せなことが多いだろう。『アミダサマ』ではパンドラの箱を開けてしまった故の悲劇、悪夢をまざまざと見せつけられた。 産業廃棄物置き場の冷蔵庫の中から発見された幼…
本を読んでいてこんなに胸が詰まったのは久しぶりだ。 昔の恋人が忘れられない十和子は寂しさを埋めるため15歳年上の陣治と暮らし始める。食べ方が汚い、トイレをすぐに汚す、どじょうみたいなど、十和子が陣治を表現する様は何ともひどい。仕事から帰宅し、…
主要な登場人物に根からの極悪人はいないのに、この終始漂う不穏な雰囲気は何なのだろう。ずっと靄がかかっている感じ。スッキリしない。 物語は佐知子の高校生の息子文彦が失踪するところから始まる。誘拐されたのか、事故に遭ったのか、何か事件に巻き込ま…
女性同士の本当に美しい友情なんてあるのだろうか?どんなに仲良く見えてもその心の中は誰にも分からない。そんな女性のドロドロが読める!嬉々としてこの作品を手に取った。 伝統ある女子校の卒業生の連続不審死。死亡した女性たちは皆6月31日に開催される…
小説の中の登場人物とお友達になってみたいと思ったことはないだろうか? 週末前だし、プレミアムビールを片手に芭子の家に遊びに行きたい気分だ。芭子と綾香と3人でビールを飲みつつ、大石のおばあちゃんの作ったご飯と商店街で買ってきたお惣菜をつまみた…
人には誰しも背負っていることの一つや二つはある。過去は変えられないし、どんなに悔いても時間は戻らない。前を向いて生きていくしかないけれど、自分が前科持ちだったらどうだろう? 前科持ちの女性二人、芭子と綾香。出所してからのお話だ。3部作の構成…
やっぱり密室系のミステリーが好きだ。 密室系のミステリーといえば、綾辻行人先生の『十角館の殺人』を始めとする館シリーズ、アガサ・クリスティーの『そして誰もいなくなった』を思い出す。相関図を書きながら、誰がどの部屋にいたか、どこに座ったかを頭…
なぜ人は『特別』という言葉に弱いのか。 あなただけ特別だよ。と言われて悪い気がする人はいないだろう。人は誰しも誰かに認めてもらいたい承認欲求がある。誰かから特別と言われるとその承認欲求が満たされるのだ。この『特別』という言葉に作中ではたくさ…
基本的に短編小説はあまり好きではなかったが、1冊でいくつものお話が読めるのは実はお得なのではないだろうか。すずの爪あとは暗い話が多く私は個人的に好きだ。 すずの爪あと石川県珠洲市が舞台。なんと猫のふくちゃん目線の物語だ。珠洲市に原子力発電所…
まえ持ちって何かと思ったら前科持ちのことなんですね。 毎日ネットでは殺人があった、窃盗があった、事故があったと悲しいニュースが多い。外野は待ってましたとばかりに犯人探しをし、住所や名前を特定し、ネットに垂れ流す。この事件は犯人の身勝手な犯行…
言葉の力は思っているよりもすごい。 何気なく言った言葉が人の人生を大きく左右する。良くも悪くも。かわいいね、美人だねと言われ続けた人は本当に美人になるし、ブスだの馬鹿だの言われ続けた人は本当にブスになる。 さて、この作品は殺人を犯し続けたフ…
え?どういうこと?結局誰が狂ってたの? 読み終わった時の率直な感想。ピースがパチパチと合うことがなく終わってしまった。頭の中が混乱したままモヤモヤだけが残る。はい、もう一回読めということですね。まんまと2周目。今度はメモをとりながら読んだ。…