インタビュー・イン・セル 殺人鬼フジコの真実 真梨幸子 レビュー ネタバレあり
なぜ人は『特別』という言葉に弱いのか。
あなただけ特別だよ。と言われて悪い気がする人はいないだろう。人は誰しも誰かに認めてもらいたい承認欲求がある。誰かから特別と言われるとその承認欲求が満たされるのだ。この『特別』という言葉に作中ではたくさんの人が心惹かれ、自らを破滅へと導いていく。
さて、こちらの作品は『殺人鬼フジコの衝動』の続編である。まさかの続編があると知り、居ても立っても居られなくなり一気読みした。『殺人鬼フジコの衝動』のレビューはこちら。
前作ではフジコより怖いのは茂子だよなぁと思っていたが、今作でもやっぱり一番怖かった。その怖さ健在。優しい顔をして人を言葉巧みに操る術を熟知しているし、さすがカルト教団で高い位にいる理由が分かる。最初は冷たくされたのに、あなただけ特別よなんて言われて美味しい食事を振る舞われた村木里佳子はすっかり気を許してしまったんだね。
そして下田健太に監禁されていた人たちはどうして逃げなかったの?なんて思っていたけれど、恐怖心から意思を無くしていくというのは納得。これ、親子関係とか教師と生徒の関係とか日常の色んな場面でも起こっているよね。人を支配するという快感か。
最後には、実はフジコは茂子の実の娘だったというオチ!おぉーそうなのか!と興奮しつつも、健太とフジコの犯した殺人は茂子の血のせいだ!と結論づけるのは何だかなぁという気がする。でも環境は大いに関係あると思うし、健太もフジコも茂子の犠牲者という見方もできるかな。
褒められた話では無いけれど、健太の行動力や人を支配下に置く技術はお見事でした。自分が困った時でも自分を救えるのは自分だけ。誰かに救いを求めると足元をすくわれる時もあるなんてことを思いながら読んだ。健太の結末はそうかぁ、そうなるしかなかったのかぁ。と無念だった。