mooncatの図書館

本が好きです。図書館に住みたい。読んだ本の感想文を書いています。

坂の上の赤い屋根 真梨幸子 レビュー ネタバレあり

 

何が嘘で、何が本当なのか。

 

テレビで言っている情報が必ずしも本当ではない。誰かが情報を操作している可能性がある。ネットも雑誌も。だからその情報の出どころはどこなのか。そしてそれは本当なのか。

 

自分の頭で考えて判断できない人は、騙されていいように使われてしまう。今の世の中で一番大切なことは、自分の頭で考えることだ。

 

さて、今作ではさまざまな人が嘘をついている。青田彩也子に大渕秀行、橋本涼。誰が本当のことを言っているのか。どの人が言っていることを信じるのか。

 

私は黒幕である橋本涼のことを信じてしまい、

小椋沙奈(イイダチヨ)=青田彩也子

と解釈して読んでしまった。小椋沙奈は青田彩也子とは別人だったのか!と知った時の衝撃。笠原智子も市川聖子も大渕礼子もみーんな、橋本涼の言ったことを信じてしまうんだよね。橋本涼が黒幕だろうなとは薄々気付いていたけれど、まさかこんなミスリードを読者の私を含め作中の人物もしていたなんて・・・

 

冒頭で登場するX=ミチルをいじめていた大渕秀行。そしてミチルの弟が橋本涼だということ。更に入院していたミチルの口に腐った蒸しパンを入れたのが橋本涼だった。あぁ、そういうところに着地するのか。

 

作中の登場人物の誰もが皆“よりどころ”を求めている。当たり前に愛されるはずの親に愛してもらえなかったり、大切にしてもらえなかったり。その心の隙間を埋めるべく誰かに依存してしまう。

 

特に礼子は弟が生まれたことにより、両親に見向きもされなくなり、寂しさから大渕秀行と獄中結婚までしてしまい見ているのが辛かった。しかも大渕秀行には利用され、最後は殺人まで犯して自殺。どこで間違ったのだろう?もっと早く家を出ていたら違ったのかな。

 

今作は真梨先生の作品の中でも、比較的登場人物が少なく混乱することなく読了。個人的にはもっとドロドロが見たかった。最後に6月31日の同窓会に出てくる弁護士の松川凛子が出てきたのは嬉しかったな。

 

mooncatbooks.hatenablog.com