mooncatの図書館

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星降り山荘の殺人 倉知淳 レビュー ネタバレあり

 

やっぱり密室系のミステリーが好きだ。

 

密室系のミステリーといえば、綾辻行人先生の『十角館の殺人』を始めとする館シリーズアガサ・クリスティーの『そして誰もいなくなった』を思い出す。相関図を書きながら、誰がどの部屋にいたか、どこに座ったかを頭に浮かべつつ犯人を推理していくのが堪らなく面白い。

 

さて、この作品はまず登場人物が個性的だ。スターウォッチャー、UFO研究家など普通お目にかかれないような職業の人物が多く、あれ?誰だったかな?と混乱することもなくサクサク読めた。登場人物も少ないし読みやすい。

 

何となく麻子が犯人かな?動機は岩岸と財野に弱みを握られていたから。最初の痴話喧嘩は岩岸と麻子の二人じゃないの?と安易な発想をしていた。麻子が犯人説で読み進めていくと、あぁやっぱり犯人は麻子だ!という風にしか思えなくなり、最終章へ。

 

星園の推理によって犯人に指名された和夫。え?どう考えても和夫では無いよね?ん?ここから犯人が名乗り出てくるの?と思いつつドキドキが止まらなかった。そしてまさかの探偵役の交代。あぁ、見事に騙されました。

 

それにしても容疑者が一人一人外れていって、最後に星園が犯人を和夫に指名をしたのはお見事。見事に見える推理によって犯人に指名されてしまうと、みんな和夫が犯人だって信じてしまう。集団の思い込みを利用して、するりと自分を容疑者から外し後の警察での事情聴取を有利に運ぶ展開をも想定しているのだろう。うーん、ここまで自己中心的に人を陥れる人ってなかなかいないよね。

 

トリックに関しては特に驚くこともなく、あぁそうなんだという印象。やかんの警報装置は不発なのは分かったけれど、だから何だったんだろう?動機も何だか弱くてふーん。もっと怨恨とかかと思った。二人目の殺人は必要だったの?星園の故郷の話はどうなったの?と色々と疑問は残るけれど、どんでん返しのくだりは最高に楽しめたし、先が気になってページを繰る手が止まらなかった。

 

やっぱりミステリーは面白いね。そして和夫と麻子がこの先どうなるかも気になるところ。またどこかで会えるといいな。