mooncatの図書館

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アミダサマ 沼田まほかる レビュー ネタバレあり

パンドラの箱を開けてしまった。

人には知らなくていいことがある。いや、知らない方が幸せなことが多いだろう。『アミダサマ』ではパンドラの箱を開けてしまった故の悲劇、悪夢をまざまざと見せつけられた。

産業廃棄物置き場の冷蔵庫の中から発見された幼女ミハル。ミハルのコエに導かれた悠人と浄鑑(じょうがん)。ミハルが現れたことによって次々と不吉で不可解なことが起こる。ホラーなのかな?いやホラーともまた違う何か。沼田まほかるワールド全開の今作。これ、好き嫌い別れるなぁと思いつつ読んだ。私は好きだけど。

ミハルは生死を彷徨った経験から、生死を彷徨う者の世界を行き来できる力を持ったのではないか。無垢で純粋な子供が故に、周りの大人達の根底にある欲望や悪を引き出してしまったのではないか。自制心や良心を全て無くした人間の醜い部分が全面に出た奇怪な描写がとても怖かった。まほかるワールドだ。

悠人と律子の歪な関係は、『彼女がその名を知らない鳥たち』の陣治と十和子の関係を思い出させる。別れればいいのに・・・と思うほど歪で危うい関係。歪であればあるほど二人をより強い絆で繋ぎ止めるのだが。

 

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悠人の父親波留雄(ハルオ)と心中した女性ナミの子供がミハルで、死んだミハルは悠人と律子の子供として生まれ変わるという輪廻転生の描写で物語は幕を閉じるが、これはハッピーエンドとも捉えられるし、また同じことの繰り返しなのかとゾワゾワする不吉な予感も込み上げてくる。

まほかるワールド全開の今作、メンタルが落ちている時は読まない方がいい。怖いものを読みたい、ワールドにどっぷり浸かりたい時にまた読んでもいいかも。次読んだ時にはまた違う解釈ができそうだ。