mooncatの図書館

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6月31日の同窓会 真梨幸子 レビュー ネタバレあり

 

女性同士の本当に美しい友情なんてあるのだろうか?どんなに仲良く見えてもその心の中は誰にも分からない。そんな女性のドロドロが読める!嬉々としてこの作品を手に取った。

 

伝統ある女子校の卒業生の連続不審死。死亡した女性たちは皆6月31日に開催される同窓会の案内状を受け取っていた。犯人は誰なのか。町の合併問題に絡んでいるのか。所々主語が誰なのか分からない箇所があったから、そこがまた混乱を招いた。読み終わった後にすぐ二周してしまった。真梨幸子先生の作品、読後いつも二回読んでしまう。二回目は相関図を書きながら読むとスッキリ。

 

6月31日開催の同窓会の案内状が届いた人がお仕置きされる、つまり死ぬ。次は自分かもしれない。そんな恐怖に震える女性たち。自分はこんな悪いことをしたからお仕置きされるのだ。なんて、誰しも清廉潔白に生きているわけじゃないし悪いことの一つや二つしてるよね。そこをお仕置きと結びつけてしまうのは短絡的すぎないか?と思ったけれど、『みんな』がそう信じてやまないからそれが本当のこととして認識されている。作中に『二人狂い』なんて言葉が出てきて、同作者の二人狂いという作品を思い出した。

 

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自分はお仕置きされる、死ぬと思い込んで自殺したり不慮の事故に遭うのは何とも薄気味が悪かった。そして一番まともに見えた松川さんが一番やばいやつと知った時の衝撃がすごい。ジミティーこと柏木陽奈子さんはただただ気の毒だったね。

 

結局6月31日の同窓会の案内状はチェーンメール不幸の手紙のような悪戯で、それを利用して自殺してまでも人を恐怖に陥れた委員長こと多香美も本当狂ってる。ゴウダマンこと合田満の言うように、自分が幸せなら人の不幸を望んだり仕返ししてやろうなんて気持ちにならないっていうのが人生の全てだよね。

 

今作終盤で出てくる学園の外部生の謎もゾワゾワ怖かった。人間を矯正させるのに環境はもちろん大切なんだけど、松川さんのように本当のサイコパスはその限りではないよね。薬の意味が分かってもうーん。でもこういう人って地頭がいいから、なんだかんだ上手くやっていくんだよなぁ。今回も女性のドロドロや何となく薄気味悪い不穏な雰囲気が楽しかった。だからイヤミスはやめられない。