mooncatの図書館

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冷たい校舎の時は止まる 辻村深月 レビュー ネタバレあり

高校生の時の悩みって何だったかな?

多分好きな男の子に気持ちを打ち明けようかと迷っただろうし、クラスの友人と喧嘩してしまって悩んだだろうし、思うように成績が伸びなくて悩んだだろうし、大学受験のことでも悩んだだろう。でも30も半ばになった今では高校生の時に悩んでいたことなんて全く思い出せない。

今作では高校生8人が校舎に閉じ込められる。しかもどうやらこの中の一人が2ヶ月前に自殺をしている?というちょっとホラーのようなミステリーのようなお話だ。それぞれ8人は個性豊かで、側から見ると人生がうまく行っているようだ。とても容姿に恵まれていたり、頭が良かったり、家柄が良かったり。もちろん人それぞれ悩みはあるだろうけれど、自殺するくらい辛いことなんて誰にあるのだろう?と思いながら読み進めた。

終始個人的にすごく残念だったのは、私は今作の主人公の深月がどうしても好きになれなかったこと。いや、むしろ大嫌いだ。友人との関係がうまくいかなかったのは大変だったとは思うが、新しい素敵な友人に囲まれているにもかかわらず悲劇のヒロインぶり、周りの友人を振り回す。挙げ句の果てに担任教師の自宅のお風呂場で自殺未遂って・・・自分のしたいことさえできれば他人はどうなってもいいのだろうか?

自殺したクラスメイトは予想通り。まぁそうだよね、そうなるよね。という感想。菅原=榊にはびっくりした。今作は上・下巻に分かれているが、上は読むのが度々苦痛になるくらいテンポが遅く個人的には上・下巻を1冊にコンパクトにまとめて欲しかった。とにかく深月の自分勝手さ、傲慢さにイライラしてしまい、それを甘やかす周囲にもイライラ。でもなんだかんだこういう女性がうまく人生を渡っていくんだよね。なんだかなぁ、主人公のことを好きになれたらまた違った感想を持てたと思うけれど今作は私には合わなかった。

でも辻村先生の作品は好きなので、気を取り直して違う作品を読みたい。