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最高のアフターヌーンティーの作り方 古内一絵 レビュー ネタバレあり

古内先生の作品を読んだ後は幸せでいつもボーッとしてしまう。今作も美しすぎる情景の描写にうっとりした。

桜山ホテルに勤める遠山涼音(すずね)は念願のアフターヌーンティーチームに異動になる。新しいアフターヌーンティーのメニューを企画するもシェフの達也には爪痕を残そうとしなくていいと一蹴される。少し空回りしつつも、お客様に楽しんでもらえるようにと毎日を送る涼音の成長の物語。

人が生きていくのは苦いもんだ。だからこそ、甘いもんが必要なんだ

涼音の祖父滋(しげる)の言葉。皆毎日を必死に生きている。人から見えなくてもそれぞれの苦労がある。甘いものはご褒美。だから味わって食べなくてはいけない。私は滋の考え方が好きだ。

アフターヌーンティーを作るシェフの立場から、サーブするスタッフの立場から、お客様の立場から。それぞれの立場から見るアフターヌーンティーはとても興味深かった。アフターヌーンティーは元々はイギリスの侯爵夫人アンナ・マリアが始めた習慣。朝食を摂った後は夕食まで物を口にする習慣がなかった時代に、ベッドルームに紅茶とお菓子を持ち込みコルセットを緩めてお菓子を口にする秘密のお茶会。最初は一人で楽しんでいたが、親しい友人を招いてお茶会をし、あっという間に貴族の間に浸透した。

アフターヌーンティーは社交の場。誰かと一緒に楽しむものと思い込んでいたので、今作の西村さんやソロアフターヌーンティーの鉄人にはとても惹かれるものがあった。アフターヌーンティーなんてもう何年も行っていないけれど、次行く時はおひとりさまに挑戦してみたいな。一つ一つの物を丁寧に時間をかけて食べ、一人の時間を楽しんでみたい。ちなみに私はジャムファーストではなくクリームファースト派。クロテッドクリームが大好きなので、スコーンにはたっぷりクリームをつけて食べたい。

古内先生のおかげでひと時優雅な時間を過ごすことができた。このご時世アフターヌーンティーには行きにくいが、美味しい香り高い紅茶をお取り寄せして、スコーンを焼こうか。また一つ楽しみが増えた。