mooncatの図書館

本が好きです。図書館に住みたい。読んだ本の感想文を書いています。

ロードムービー 辻村深月 レビュー ネタバレあり

 

読み終わった後にそういうことか!と全てのピースがはまった。

 

一度読んだ本の中の全ての登場人物が幸せになっていればいいと思う。こうなればいいな、なんて希望はあるけれど思ったようになっていなくても幸せに暮らしていればいい。だから、かつての登場人物が時を経て幸せに暮らしていることを作家さんが描いてくれているのを見ると本当に嬉しい。

 

さて、今作は『街頭』『ロードムービー』『道の先』『トーキョー語り』『雪の降る道』からなる短編小説集。1つ1つの短編を読み終わった読後感も良いが、全てを読み終わった後の爽快感が最高だった。

 

今作を読む前にぜひ『冷たい校舎の時は止まる』を読んでおくことを強くおすすめする。

 

 

 

街頭

最初読んだときは、何これ?ストーカー?って思った。夜中に男性が女性の家の前に行って、訪ねるでもなく家の明かりを見てるわけでしょ。しかも何度も。怖いなぁ・・・なんて思った自分が恥ずかしい。この鷹野は冷たい校舎の時は止まるの鷹野博嗣なんだね。てことは、女性は辻村深月ってことか!

 

ロードムービー

小学生のトシとワタルが二人で家出をする二人の友情の物語。トシはクラスの人気者だけど、ワタルは嫌われている。けれどトシはワタルが好きだからクラスメイトの目を気にせず仲良くすることで、クラスのみんなから外されてしまう・・・

 

これ、みんな男の子二人の物語だと思って読んだよね?まさかのトシが慧恵ちゃんていう女の子だなんて。

 

そして、トシとワタルが家出をして向かった先の『タカノのおじさん』は鷹野博嗣で、一緒にいた女性は辻村深月だ!

 

そしてそして、トシの本名は諏訪慧恵。お父さんは政治家で、お母さんは美人な女医。って!!!冷たい校舎の時は止まるの諏訪裕二と桐野景子の娘なんだ!!!って気づいた時鳥肌がたった。裕二のお父さんは政治家だったし、景子の実家は桐野総合病院だったし。二人は無事結婚したんだね。嬉しいなぁ。

 

道の先

この作品を読んだ時は、これはどの作品とも繋がりのない単独のお話なのかなと思った。けれどあとがきを読んで、『俺』が片瀬充だと知ってびっくり!てことは、俺の電話の相手は佐伯梨香だったんだ。確かに俺と彼女が再会して彼女の方が『サカキくん、元気かな』って言ってるんだよね。片瀬くんが良い人だけではなく、人を支えることができるまで成長していることが嬉しい。

 

トーキョー語り

親の都合で転校を余儀なくされる子供たち。新しい学校に馴染めるかどうかという不安。子供たちにとっては小さな教室が世界の全て。そこで馴染めなかったら結構な地獄を見ることになる。

 

そんな中で一人で飄々と生きているように見える遠山さん。頭も良く美人。かっこいい子だなと思っていたけれど、実は教室で一人でいることが辛い時もあると告白。そんな彼女の心の支えは、いつでもかけてきていいよと言ってくれたあの人の電話番号。

 

遠山さんは『道の先』で出てきた千晶で、あの人は片瀬充なんだ。遠山さんの両親が離婚して苗字が変わっていたから気付かなかった。

 

雪の降る道

みーちゃん=辻村深月、ヒロくん=鷹野博嗣、スガ兄=菅原榊。冷たい校舎の時は止まるの登場人物の過去を描いた物語。ヒロくんは親友を亡くしてから病気がちになり、あまり学校に来れなくなった。そんなヒロくんを心配し、毎日お土産を持ってお見舞いにくるみーちゃん。

 

ヒロくんは高校生になるまでに成長したなと思うけれど、みーちゃんは良くも悪くも全然変わってない。私ってひたむきでしょ?可哀想でしょ?みんな私のことたくさん心配してねってところが子供の頃から変わらない。さすが深月だ。

 

物語は繋がっている。みんなそれぞれの人生を歩んでいて、幸せそうでそれが本当に嬉しかった。久しぶりに冷たい校舎の時は止まるを再読しようかな。

 

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