mooncatの図書館

本が好きです。図書館に住みたい。読んだ本の感想文を書いています。

東京すみっこごはん 親子丼に愛を込めて 成田名璃子 レビュー ネタバレあり

 

何かに一生懸命になることは悪いことなのだろうか。ひたむきに夢を追ったり、ひたむきに人を好きになったり。好きなことに一生懸命になったり。

 

何必死になってるの?wそんなので食べていけると思ってるの?ww頑張りすぎてみっともないよ?wwwなんていう言葉を平気で吐ける人は、今までに自分が頑張ったり何かに必死になったことがない人だ。だから他人の行動がとても気になる。すみっこごはんのみんなは決して一生懸命な人を馬鹿にしない。とても温かな世界だ。

 

今作でも様々な悩みを抱えた人がすみっこごはんに現れる。幸せそうに見えても、何不自由ない生活をしているように見えても悩みは人それぞれ。そんな悩みにも一つの共通点がある。それは素直になれないこと。素直になることは難しい。人にどう思われるだろう。嫌われたらどうしよう。気持ち悪いと思われるかもしれない・・・なんてね。自分の気持ちに他人が評価を下せることなんてない。いつだって自分の気持ちは自分だけは受け止めてあげなきゃ。なんてことを思い知らされる。

 

今作では柿本さんのお話にグッときた。ボクシングで挫折して、どうしようもなくて、そんな時に由佳さんと楓ちゃんと出会って。由佳さんの底抜けの明るさと前向きさ、楓ちゃんの可愛らしさと素直さが柿本さんの心をゆっくりと温めていく。あ、久しぶりにおにぎり握ろうって思うよね。

 

表題作の『親子丼に愛を込めて』は個人的に怖さを感じた。お母さんが病気で亡くなって、お父さんが再婚して娘は複雑な気持ちなのに、お母さんとの思い出の親子丼を毎日出す後妻・・・娘と仲良くなりたい気持ちは分かるけれど、これって美談なのかな?16歳という多感な時期の女の子の気持ちを踏み躙るように感じて、個人的には後味が悪かった。毎日同じメニューなんて単純に嫌だよ・・・

 

ところで、奈央ちゃんと一斗さんはいつの間にお付き合いをして、いつの間に婚約までしたのだろう?一斗さんの元カノはどうなったの?その辺りが全然書かれてなくてふと疑問になった。いつか分かるといいな。