mooncatの図書館

本が好きです。図書館に住みたい。読んだ本の感想文を書いています。

東京すみっこごはん 楓の味噌汁 成田名璃子 レビュー ネタバレあり

 

人に迷惑をかけてはいけません。

 

子供の頃はこれが当たり前だと思っていた。でもさ、人に迷惑をかけずに生きていける人っているのかな?

 

仕事でミスをして同僚に迷惑をかけてしまった時に、あからさまに嫌な顔をされたこともあるし、大丈夫だよ!誰でもミスがあるからお互い様!って言ってもらったこともある。人に迷惑をかけるのは生きている中では当たり前。だから人に迷惑をかけられてもお互い様と言える人でありたい。

 

さて、今作でも色んな悩みのある人がすみっこごはんにたどり着く。一番印象的だったのは中学3年生の瑛太くん。彼の両親は離婚していて母子家庭。母親は寝る間も惜しんで仕事をしているが、暮らしは苦しい。修学旅行の積立金が払えないことも多々ある。瑛太はそんな暮らしぶりを知っているから破れた靴下を履き、小さくなったシューズも我慢して履いている。

 

そんな瑛太に柿本さんを始めすみっこごはんメンバーは手を差し伸べるが、瑛太はその優しさを受け取ることに躊躇してしまう。これ、分かるなぁ。親が子供にお金が無いなんて言うのは論外だけど、子供って自分の家の経済状態に気付くし、そして自分の欲しい物ややりたいことを我慢してしまうんだよね。差し伸べられた優しさに手を伸ばして受け取る資格なんて自分には無いと思ってしまうし、人に迷惑をかけてはいけない、自分一人でなんとかしなきゃという呪いにかかってしまう。

 

本当に困っている時は人に迷惑をかけてもいいし、人に頼ってもいいし、助けてって言ってもいい。嫌な顔をする人もいるかもしれないけれど、必ず手を差し伸べてくれる人がいる。瑛太はまたすみっこごはんを訪れてくれるだろうか。お母さんと一緒に来てくれるといいな。

 

苦しい時、辛い時は温かくて美味しいものが身に染みる。瑛太とお母さんには温かいお鍋を囲んでいて欲しいな。次作で最後となるのが寂しいなぁ。読みたいような読みたくないような。