mooncatの図書館

本が好きです。図書館に住みたい。読んだ本の感想文を書いています。

それは秘密の 乃南アサ レビュー ネタバレあり

 

人に恋をするという感情を表現することは難しい。

そんな感情を描いた乃南先生の9つの短編集。

 

ハズバンズ

美容に執着する元妻がお金をせびりにやってきた。外見に捉われるばかりに中身はスカスカ。ついついお金を渡してしまうが、現夫が後から返済しにくる。元夫と現夫はひょんなことからお酒を飲む仲になった。かれこれこんな奇妙な関係が10年にもなる。

 

どうしようもない女性に振り回される可哀想な男たち。のお話かと思いきや最後の最後にとんでもない。現夫もとんでもない人だった。外見ばかり磨いて何もしてこなかった女性が不幸になるのは当然。だけどさ、元夫はもう家庭もあるのだからつまらない女性に関わるのはやめておきな。今の奥様がとても気の毒。

 

ピンポン

カップルの別れを予感させる始まり。もうダメなのかな?と泣いている彼女の元に彼氏がやってくる。

最初の予感を根こそぎ覆す最後。どうぞお幸せに。

 

僕が受験に成功したわけ

中学受験を控えている真吾は同じクラスの森島奈月と付き合っている。好きなのかどうかも分からないけれど・・・ある日奈月の家を訪れると、ミニスカートを履いた奈月の母親に迎えられる。綺麗な足。真吾はその足が気になって仕方がない。

 

小学6年生という多感な時期に、欲求不満の気持ち悪いおばさんから足を見せつけられるのか・・・。綺麗でいたい、若くいたい気持ちは大切にしたらいいし、自分の好きな服を着るのはいいがこれは娘の彼氏と娘に対する侮辱なのでは?見せつけるだけでなくその先まで・・・

とにかく気持ち悪かった。

 

内緒

電車の中で彼氏と抱き合いキスをしていた香苗。

それを目撃した彼女。彼女は言う。

「色んなことを想像はするけど、現実には何も出来なくて、ただドキドキしながら彼のことを見てるときって、一番じゃない?」

 

彼女の正体が分かった時、にやついてしまった。

 

アンバランス

新村瞳子は年下の彼氏直也と4年同棲している。瞳子は仕事を辞め専業主婦のような生活だが、直也はちょうど仕事が忙しくなってきた。と同時に二人の間の会話も減り、お互いに顔を合わせる時間も減った。

瞳子の方が背も高く、年上。直也とはなんともアンバランスな組み合わせだ。

 

もう潮時かも・・・と考えている瞳子。だが直也は二人の将来のために忙しい仕事の傍ら二人の新居も探している。忙しい、疲れているからという理由で思っていることを口にしない直也。

 

あぁもうダメだろうなぁ。私ならさっさと見切りをつけて次に行くだろうなと思いながら読んでいたけれど瞳子の健気さよ。言わなくても分かるではなく、言うことが大切。

 

早朝の散歩

白い杖を持つ男性に声をかけた女性。お互いに名前も住んでいることろも知らないのに、恋しい人に言ってもらいたい言葉を男性は言ってくれた。

 

いつも彼女を不安な気持ちにする彼のことを思うのは辞めて幸せになってほしい。もう彼女の中で答えは出ているよね?

 

キープ

人を好きになるのは一度きり。これが最初で最後。15歳の時にそう誓った。

結婚はしたが5年で破綻。私は自分で誓った呪いに縛られている。

 

だが、視線一つで息苦しくなる相手に出会ってしまった。自分の気持ちに素直になろうとしている彼女を応援したい。頑張れ!

 

三年目

結婚して三年目。新婚当初のドキドキはもう無い。喧嘩する種は幾つでも見つかるのに。

そんな折に行動に出た妻。素敵な奥様だ。

 

それは秘密の

台風という非常事態の中で出会った男女二人。真っ暗な中お互いの顔も見えない。

だけどなぜか惹かれていく。救助が来ればもう会うこともないだろう。このまま時間が止まってしまえばいいのに・・・

 

お互いに既婚で、相手とどうこうなろうという気があるわけでも無いのに惹かれていく。ある意味とても純粋な気持ち。救助が来ればまた現実に戻るだけ。でもきっとふと思い出す日が来るのだろうお互いに。

 

個人的に表題にある『それは秘密の』と『内緒』が好き。

短編小説はサクッと読めるし、短いからこそぎゅぎゅっと中身が詰まっていて引き込まれた。