mooncatの図書館

本が好きです。図書館に住みたい。読んだ本の感想文を書いています。

ぼくのメジャースプーン 辻村深月 レビュー ネタバレあり

 

許せない人はいますか?

 

自分ににひどいことをした、傷つけた人。許そうと思っても許せない人。そんな許せないという自分の気持ちとどう付き合っていくのが正しいのだろうか。

 

結論から言うと私の場合は、もう二度とその人とは関わらない。連絡が来ようとずっと無視を続けるし連絡を断つ。そして自分は傷ついた分めちゃくちゃ幸せになる。そしてもし、許せない人が不幸になっていたらざまあwとほくそ笑む。間違っても復讐なんてしない、関わるだけ時間と労力の無駄だから。

 

でも、自分の大切な人が誰かから傷つけられたらどうだろうか。自分の大切な家族が誰かから傷つけられたら・・・と考えると悔しくて涙が出るし許せないし、復讐だってしたくなる。ただし、自分の手を下さずに。

 

自分が相手に手を出した時点で相手と同じ土俵に立つことになるし、被害者というスタンスは崩さないに限る。自分はあくまで被害者なんですという立場で同情心を集め、相手が大切にしている物を奪う。これが私が考える一番残酷な復讐だ。お金、地位、名誉、家族・・・一つずつ一つずつ奪っていく。そして相手には反省しながら苦しみながら死んでほしい。

 

今作では主人公は小学4年生。大切な幼馴染が大人の悪意によってひどく傷つけられ声を失ってしまう。幼馴染を助けたい、そして犯人には反省してほしいぼく。しかしながら犯人は自分のしたことを全く悪いと思っていない、しかも上級国民。お金でマスコミの口を封じ、自らの人生も悪い方向には向かない。

 

そんな犯人に小学4年生のぼくはどう立ち向かっていくか。犯人を罰するにはどうしたらいいか悩み苦しむ。そこで登場するのが大学で心理学を教えている秋山先生。以前『子どもたちは夜と遊ぶ』にも出てきたので、やっと会えた!と嬉しくなった。

 

mooncatbooks.hatenablog.com

 

秋山先生とぼくが持つ不思議な言葉の能力で犯人に復讐をしてやりたい。秋山先生は大人なだけあってその復讐のやり方には容赦ないが、ぼくは犯人や犯人の周囲の人が傷つくことを望んでいるわけではない。ぼくは優しく強い、私なんかよりもずっと。そして犯人はどこまでも最低な人間だった。

 

本書を手に取ったのは『子どもたちは夜と遊ぶ』で秋山先生が真紀ちゃんの元彼に使った力がどういうものか知りたかったからだ。そういうことか!とひとつ謎が解けた。やはりスピンオフ小説は面白い。

 

今作に月子らしき人物が出てきたのには残念!やっぱり私は彼女の考え方が好きになれない。私って優しくて素直でいい子でしょ?と言われているようで、さぞ周りの人に大切に守られて生きてきたのでしょうねと言いたくなる。そう、私が月子を嫌いな理由は彼女が真っ直ぐで素直でたくさんの人から愛されているからだ。私は彼女が羨ましいのだ。

 

本を読む時間は自分と向き合う時間。いやーすごくすごく今作では考えることが多くて正直まだ全てを理解し、落とし込むことができずにいる。少し経ってからまた読んでみたい作品だ。