mooncatの図書館

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女ともだち 真梨幸子 レビュー ネタバレあり

友達って何だろう?

自分が友達と思っていても、相手はただの知り合い程度に思っているかもしれない。学生時代、仲の良い二人だなぁと思っていても実は二人のうちの片方が相手を嫌いだったり。特に女性同士の友達って難しいよね。

今作の登場人物は皆どこか『女性』であることに縛られ、自ら苦しみに身を投げている印象が強かった。結婚、出産、それが叶わないとなると性を売ったり。結婚という夢を叶えるために友人の彼氏を奪ったり。結婚が叶ったとしても人からの羨望を望み、自ら自滅していく人もいる。人は誰でも自己顕示欲や承認欲求があるけれど、登場人物が皆それが顕著で痛々しく悲しいほどに不器用な女性だ。

表題の『女ともだち』ってどういう意味なんだろう?誰と誰が友達なの?と一度読んだだけではあまり分からず、二周目して納得。真梨先生のこういう書き方が好きでクセになる。実世界では赤の他人のようでも、ネットの世界で綿密に繋がっていたり、楢本野江の本名が分かった時にはえ!?ってなった。野江は田宮瑤子とそんな繋がりがあったのか、なんて。

野江が自分のキャリアのために自分の都合の悪いことを隠してルポを書くのはすごく気持ちが分かる。人にはそれぞれ優先順位がある。全部全部大切にできればいいけれど、人は日々取捨選択をしながら生きている。今の自分にとって何が一番大切なのか。日々変わっていくことではあるけれど、野江は自分が著名なライターになることを選んだ。これは誰にも責められることではない。野江がもし結婚という選択肢をとれば、著名なライターよりも家族を優先するかも知れない。

この作品では誰もが誰かの友達ではないなというのが私個人の感想。友達なら彼氏を奪ったりしないし、危険な薬を渡したりもしない。何だかずーっとどろどろしていて自分が一番、自分さえ良ければいいという感情が滲み出ていてゾッとした。生きている人間が一番恐ろしいよね。実世界ではあまりお目にかかることのない人間の醜悪な部分を書かせると真梨先生は天才。やっぱり私は真梨先生の作品が大好きだ。