獄門島 横溝正史 レビュー ネタバレあり
死んだ戦友、鬼頭千万太の遺言を託されて獄門島に行った金田一耕助。
獄門島。かつて流刑の地とされていた島。
そこに住む戦友の三人の妹が殺されるという遺言を残して逝った千万太。そして実際に獄門島で殺人事件が次々と起こるというお話。
獄門島に住んでいる人は皆気ちがいだ。という言葉が印象的。島だからだろうか。閉鎖的で外からの人を受け付けない。島の中でも派閥がある。昔の田舎の悪いところばかりが目に付く。
結果的に三人の妹は殺されてしまうのだが、犯人は一人だと決めつけていたから犯人の正体が分かった時はびっくりさせられた。まさか、あの三人だったとは・・・と。
そして動機はきっと財産や地位や権力が欲しいから。そんなところかと思っていたが、死んだ嘉右衛門の意志を継いだというところがなんとも言えない嫌な感じを残した。犯人の最後も後味が悪い。これってイヤミスだよね?
花子が殺された時の和尚の言葉。
『気ちがいじゃが仕方がない』
この言葉に金田一同様私もずっと惑わされていた。本当は
『季ちがいじゃが仕方がない』
と言ったのだった。
『鶯の身をさかさまに初音かな』という春を謳った句と季節は違うが仕方がないという、日本語の難しさと美しさを表現された横溝先生はさすが。
起こった殺人は残忍だし、なんだか不気味で後味の悪い作品だけれど、今回も文章の美しさ故読んでしまった。金田一耕助シリーズを読破したい。
ちなみに本陣殺人事件、八つ墓村のどちらも面白かった。