mooncatの図書館

本が好きです。図書館に住みたい。読んだ本の感想文を書いています。

本陣殺人事件 横溝正史 レビュー ネタバレあり

 

横溝正史。ミステリー好きな人で知らない人はいないだろう。とはいえ、私が横溝先生の作品を手に取ったのはつい最近のことで、トリックはもちろんのこと文章の美しさにはまってしまった。

 

今作には3つの作品が収められていたので、1つずつレビューを簡単に。

 

本陣殺人事件

とある田舎の村での出来事。密室で二人の男女の遺体が見つかる。その男女はその日に結婚した二人だった。事件現場には三本指の血痕が残っていた。そう言えば近頃三本指の怪しい男が付近を彷徨いていた。犯人はあの三本指の男に違いない・・・

 

なんて話だが、トリックが秀逸。まず普通は思いつかない。そして何よりびっくりしたのが、自殺を他殺に見せかける・・・というね。まさか賢蔵さんが自殺なんて。

 

そして克子が殺された動機がまた時代を感じさせるよね。

 

車井戸はなぜ軋る

妹が、病気で療養施設に入っている次兄に書いた手紙を主体に話は進む。

 

長兄が戦争から帰ってきたが、様子がおかしい。人が変わってしまったみたいだ。長兄にそっくりなあの男と入れ違ったに違いない・・・

 

という体が弱いがとても頭の良い妹の鋭い洞察力で、私は長兄が入れ替わっていると思い込んでしまった。が、真実はとても奇なるもの。長兄は誰とも入れ替わっておらず、精神を病んでいたため様子がおかしかった。

 

精神を病んだ理由は、父が外腹に生ませた伍一のあの一言。

 

人の復讐心って恐ろしい。自らは手をかけず、言葉一つで人を奈落の底に落とすことができるんだね。怖い話なのに妹が書いた手紙で話が進むからサクサク読めた。

 

黒猫亭事件

顔の無い女性の死体が発見された。殺されたのは誰なのか?犯人は?

 

殺された人も犯人も二転三転して惑わされた。殺されたのはお繁?鮎子?さらに男性の死体までも発見される。どういうこと?

 

どちらかが犯人で、どちらかが被害者だ。という風にずーっと読んでいてら、まさかの結末に脱帽。こんなトリック思いつかないよね。横溝先生には勝てない。

 

どのお話も面白かったが、一番好きなのは黒猫亭事件。結末が思いもよらない物だったし、二転三転させられてハラハラドキドキが止まらなかった。