mooncatの図書館

本が好きです。図書館に住みたい。読んだ本の感想文を書いています。

うつくしい子ども 石田衣良 レビュー ネタバレあり

愛情とは支配することだから。

本作で一番印象に残った言葉。こういう曲がった愛され方をした人って意外と多いのではないだろうか。子供には成功してほしい、良い人生を歩んで欲しいと望むばかりに子供にたくさんのことを要求する。みんなと仲良くしなさい、嫌いな人とも仲良くしなさい、たくさん勉強しなさい、スポーツも頑張りなさい・・・

子供は必死になって頑張る。親に褒められたいから頑張る。そうして知らず知らずに親に支配されていく。得てして親に支配されている子供はとても優秀な子供が多い。そして自らも他人を支配下に置いていくのだ。

今作は近所で9歳の女の子が殺されることから物語は始まる。そして犯人は13歳の弟カズシだった。兄のミキオの視点で語られる。加害者家族にスポットを当てていることから東野圭吾先生の『手紙』を思い出した。

 

mooncatbooks.hatenablog.com

 

『手紙』では加害者家族の苦悩が全面に出ていたが、今作では弟の心に兄が迫っていく形。中三のミキオは誰よりも大人で達観していた。改名もせず、学校にも今まで通り通い、いじめにも耐え抜く。私ならまず学校には行けないだろうし、絶対に改名もするし、自宅で悶々とこれから先どう生きていくかを考えるだろう。弟のことなんて考えられないし、考えたとしてもなんて事してくれたんだ!と怒りの感情がまず出てしまう。ミキオみたいに強い子供って本当にいるのかな?

13歳という多感な時期には人に影響されることが多い。良くも悪くも。松浦くんが松浦署長と親子だと分かった時はなんか納得。松浦署長は悪気はなくても子供を支配し、自分の理想を押し付けすぎていたんだなと。もし松浦くんも松浦署長も死んで無かったら、きっとこの親子関係はどこかで破綻し、親が子供に捨てられるパターンになるのかな。そして流行りの言葉で言えば親ガチャ失敗、毒親なんて言葉が出てくるのだろう。

私は年齢的にも今作を子供目線ではなく親目線で読んだ。親だって人間、完璧ではないけれど子供にとって一番影響力を持つのは親。残念ながら親が良かれと思ってしたことが、子供には悪影響を及ぼすこともある。親が子供のことを一人の別の人間として捉えられて初めて健全な人間関係が築くことができる。家族ってなんだろう?親子ってなんだろう?しんどいと思ったら離れるのも一つの愛情。そんなことを思った。