mooncatの図書館

本が好きです。図書館に住みたい。読んだ本の感想文を書いています。

お引っ越し 真梨幸子 レビュー ネタバレあり

 

お引っ越し。

 

そう言えば私は今に至るまで数えてみると18回もお引っ越しをしている。中にはやばい家もあって、すぐに引っ越したこともあるがそれも良い思い出。

 

家は自分が帰る場所。くつろげる、心安らぐ場所であるべき。お引っ越しはワクワクもするが面倒でもあること。簡単ではあるが、今作を解説していく。

 

キヨコは自身が住んでいる部屋が、犯罪者がかつて住んでいた部屋だと知り引っ越しを決める。部屋の内覧をし、終わったら管理人のアオシマに声をかけるように言われる。

 

キヨコから声がかからなかったが、帰ってしまったのだろうとアオシマは思う。実際にはキヨコはちょっとしたはずみで避難器具専用室に閉じ込められていたのだった。

 

イラストレーターのナオコはシングルマザー。娘のカオリと二人暮らし。隣人のヤマシタは何かと二人のことを気にかけてくれ、お金の援助もしてくれている。

 

そんな中、二人は引っ越すことになった。管理人のアオシマには引っ越しの原因は隣人の騒音トラブルだと思われているらしい。

 

引っ越した後、ニュースでヤマシタさんが腐乱死体で発見されたと報道された。お引っ越しの度に捨てるか捨てないか保留の棚に詰め込まれるものが多くなる。

 

アオシマ運送が片手間にやっている帝都引っ越しセンター。そこで働くマナミ。夫はR自動車で働くサラリーマン。体調を崩し、今は窓際の部署で働いている。最近近くで頭部と体の一部がない身元不明の死体が見つかったらしい。

 

マナミは職場で起こる様々なことに不審を抱いていた中、一通の手紙を見つける。どうやらマナミの前任者が書き置いたものらしい。

 

『Aさんは人間の肉を食べています。もしこれを読んでいるあなたが私の後任なら、私はもうこの世にはいないでしょう。次はあなたが食べられる番だから気をつけて』

 

マナミはすぐさま仕事を辞める。

 

社内で引っ越しをすることになった。

会社でいじめの標的になっているサトウユミエは自身の私物を詰めた箱が行方不明になっていることに気付く。

 

箱を探し回るユミエを横目に裏の番長と呼ばれる派遣のアオシマはほくそ笑んでいる。行方不明になった箱をホームレスが持っているのを見つけ、ユミエは追いかけるがその途中で橋から転落する。

 

SEとして働くイトウキヨシは隣人の騒音によって寝不足。どうやら夫が妻にDVをはたらいているらしく警察に通報。

 

翌日眠気に耐えられなかったイトウは残業を同僚のアオシマに任せて退社。隣人の妻がイトウの元に引っ越しの挨拶にやってきたが、その場で隣人の妻に殺される。DVをはたらいていたのは妻の方だったのだ。

 

引っ越し好きなサヤカはアオシマが管理するオシャレなマンションに引っ越してきた。引っ越しも終わり、サヤカは夜な夜なネットサーフィンをしている。

 

自身が住み出したマンションの辺りをネットの地図バーチャルストリートで歩いていると、マンションのエントランスを通過し、今いる部屋にまで入ることができた。あれ?おかしい?しかも玄関先に紐が落ちている。その紐が何か確認したくて実際に外に出て・・・

 

その後、サヤカは非常扉の前で死体で発見された。

 

そして解説。いずれの章にもアオシマという人物が出ていて、アオシマに会ったら死ぬ運命にある。

 

アオシマ=死神

 

という解説を書いている人物はアオシマサブロウ。

 

今作の構成も見事で、そう繋がるのかぁと納得。

 

・『扉』のキヨコは避難器具専用室に閉じ込められ3年後にミイラになった状態で発見される

・『棚』のナオコは男性との距離が掴めず、離れたいと思う度に殺していた。そして殺害後は引っ越し。

・連続人食い魔として逮捕されたのは、マユミの夫である三河勝成

・『箱』のユミエは霊となり、会社を彷徨っている

・『紐』のサヤカはネット上に書かれていた死神に会う方法を知らず知らず試してしまっていた。

なんてことも解説から判明した。

 

お引っ越しをするのは進学、就職、転勤、結婚などの人生の転機であることが多い。そして自分の人生を変えたいと思うのなら環境を変えるのが一番だし、余裕があるのなら引っ越しが手っ取り早い。

 

そういう意味では『棚』に出てくるナオコは人を殺した後に必ず引っ越しているようなので理にかなっているような気もする。いや、良くないというか犯罪だけどさ。

 

ワクワクするはずのお引っ越しも真梨先生の手にかかるとこうも嫌な感じになるのか。と今作も面白かった。