mooncatの図書館

本が好きです。図書館に住みたい。読んだ本の感想文を書いています。

ご用命とあらば、ゆりかごからお墓まで 万両百貨店外商部奇譚 真梨幸子 レビュー ネタバレあり

 

お客様は神様。

なのだろうか?

 

お金を払っているんだから。こっちは客なんだから。と言い出す人のほとんどは貧乏人。貧乏人ほど少しのことにクレームをつけたがり、自分を大切に扱ってよ!と言い出す。やれやれ。

 

そんな話はさておき、今作は百貨店の外商部が舞台。外商さんといえば、欲しいものを伝えておいたら取り寄せてくれる人。いつも美味しいお菓子を持ってきてくれる人。家に荷物を運んでくれる人。いつも優しくて親切な外商さん。そんなイメージしか無かったが、外商さんから見ればお客様の懐事情を把握しているわけだし、親戚以上のお付き合いなのかもしれない。

 

以下、手短に解説をしていく。

 

タニマチ

熱海乙女歌劇団の海野もくずのファンクラブのメンバー

・瀧島

・白井

・日高

・上野

・川越

 

敏腕外商の大塚佐恵子は後輩の森本歌穂をファンクラブに勧誘し、メンバーの一人にする。パッとしない海野もくずをスターにするため、ファンクラブメンバーは身銭を削り海野もくずに捧げる。

 

それでも資金が足りない。そこで大塚佐恵子は自らの顧客である飯田菜穂子をタニマチにした。飯田菜穂子はコンサル、コメンテーターとして活躍しているが、生きがいをなくしている状態。大塚佐恵子は飯田菜穂子に生きがいを与えたのだった。

 

トイチ

万両百貨店の食品売り場、洋菓子店ラ・ジュテームが舞台。

 

ラ・ジュテームで働いている人

・秋元美雪(店長)

・越野由佳子

井上奈々子

・シミズ(派遣)

・ヤナイ(派遣)

・サトウ(アルバイト)

 

万両百貨店の食品売り場で、お金持ちのお嬢様が社会勉強の一環としてお忍びで働いているらしい?そんな噂が駆け巡る。

 

外商の根津剛平は越野由佳子をお嬢様だと思い込みアタック。

店長の秋元美雪はサトウをお嬢様だと思い込み贔屓し始める。

 

本当のお嬢様は井上奈々子井上奈々子は外商の大塚佐恵子の顧客の娘。

 

インゴ

ゴスロリ、同人誌の世界に感銘を受けた恭子は自らを“ラグエル”と名乗り出す。作者は『暗黒姫』恭子は暗黒姫を崇拝している。同じく暗黒姫を崇拝している信徒アモンとも知り合う。

 

将来のことなど何も考えていなかった恭子だが、たまたま暗黒姫が万両百貨店のラ・ジュテームで働いているところを目撃。暗黒姫はパッとしない太った中年女性で、周りからもいじめられている。

さらに、信徒であるアモンが万両百貨店に爆発物を仕掛け逮捕される。

恭子は目が覚め、自身の将来のことを真剣に考えるのだった。

 

ここで分かったことは、暗黒姫=越野由佳子

 

イッピン

タレントの豪徳リンダは俳優の鷹橋健斗と不倫をし、バッシングに合っている。人間不信に陥り、自宅を盗聴されていると外商担当の小日向淑子を自宅に呼び出す。

 

そこで淑子は梅屋百貨店の敏腕外商薬王寺涼子を見かける。薬王寺は鷹橋健斗の外商担当。

 

リンダへの気味の悪いfaxを送信していたのは薬王寺涼子。

リンダの誹謗中傷をネットに書き込みしていたのは鷹橋健斗。

リンダは鷹橋健斗が予約していたティーカッププードルを横取りする形で購入していた。

鷹橋健斗はティーカッププードルが欲しいがために、リンダに近づき不倫関係になった。

リンダは自暴自棄になり、マンションの点検に来た人を切りつけ逮捕される。

最終的に鷹橋健斗はティーカッププードルを引き取ることに成功。

小日向淑子は退職。

 

ゾンビ

顧客である笠原亜沙美を担当していた小日向淑子が退職したため、後任として森本歌穂が任命された。小日向淑子は現在ペットショップで働いている。

 

笠原家に向かう小日向と森本。小日向は笠原家の家、使用している物を見て、笠原家が窮地に陥っていることを察する。そしてその後笠原家は破産して夜逃げ。その真相は・・・

 

15年前、お金持ちの笠原亜沙美は訛りの強いタクシー運転手に一目惚れ。亜沙美は当時の外商担当の小日向淑子にあのタクシー運転手と結婚するから彼を自分に釣り合う紳士に仕立て上げて欲しいとお願いする。

身なり、所作、教養。全ての面で立派な紳士となったタクシー運転手は亜沙美と結婚。しかしその頃から笠原家は傾いていった。

 

笠原亜沙美の夫、笠原和臣は元々お金持ちの芳山家の当主。戦後没落したが、芳山家再興のため笠原亜沙美と結婚し、資産を管理していた。芳山家は見事、万両百貨店の外商顧客名簿に復活。

 

ニンビー

大塚佐恵子がかつて担当していた港区白金の峰越プレス。

白金家族五人殺傷事件により峰越家に住む5人が殺された。生き残ったのは末っ子の娘で名前を変えて親戚に引き取られる。

 

ニンビーとは?

not in my back yardの略。物件の近くにあるとその物件の価値が下がるとされる迷惑施設のこと。

 

外商の根津剛平の顧客内田弁護士の娘が一人暮らしを始めるという。そこで妻と娘が白金のマンション、グレイトプラチナコートを仮契約するが、内田氏は猛反対。理由はそのマンションには内田氏の愛人の田中が住んでいるから。内田氏は根津に妻と娘に別の物件を勧めるように言うが上手く説得できず。

 

しかしながらグレイトプラチナコートに住むお笑い芸人が麻薬パーティーをしていたことが判明し逮捕される。かつてはグレイトプラチナコート側から見ると峰越プレスはニンビーだったが、グレイトプラチナコート自身がニンビーとなったのだった。

 

ちなみに白金家族五人殺傷事件で生き残った末娘は峰越家の妻と内田弁護士との間に出来た子供。今は名前を田中と名乗り、内田氏の弁護士事務所で働いている。内田氏の愛人は実の娘。

 

マネキン

木こり堂の看板娘の橋爪知美が無断欠勤。

橋爪知美と森本歌穂は昔、同じ風俗店で働いていた。

大塚佐恵子の長年の顧客百瀬洋造はかつての人気小説家だが、今はその面影は無い。

百瀬洋造は同棲していたマネキンを殺してしまい?大塚佐恵子を呼び出す。

 

コドク

橋爪知美は百瀬洋造と同棲していたが、口論の末百瀬氏に殺される。

大塚佐恵子は百瀬氏に、マネキンと橋爪知美の死体を切断し混ぜてゴミに出すことを提案。

大塚佐恵子と百瀬氏はかつて恋人関係だった。

これから二人の関係も修復するのか・・・

 

お客様は神様なのだろうか?

お客様が望むのなら何でもして差し上げるのが外商の仕事なのだろうか?

相変わらず登場人物の誰も好きになれないのはさすがです。這い上がるため、欲しいものを手に入れるために他人を蹴落とし騙す人々。

 

ぐちゃぐちゃに絡み合った人間関係が少しずつ解かれていく真梨先生の作品が大好き。今作も相関図を書きつつ楽しめた。