mooncatの図書館

本が好きです。図書館に住みたい。読んだ本の感想文を書いています。

恋愛禁止 長江俊和 レビュー ネタバレあり

 

本当に人を愛するとはどういうことなのか。

 

好きだから相手に暴力をふるう。これは愛ではなくてただの支配。暴力とは力の暴力も言葉の暴力も含む。だからもし、お付き合いしている相手から暴力をふるわれている方がいたらそれは愛されているのではなく支配されている。全力で逃げ出すことをオススメする。

 

さて、本作の主人公は木村瑞穂。なんというか悉く男運が無い。おかしな男性に好かれてしまう。唯一、結婚した健一がまともなのが救い。その健一も、殺人を犯した後の瑞穂の憂のある影のある目に惹かれたという。はて、人は何か秘密がある影のある人に惹かれてしまうのか・・・

 

ストーカーと化してしまった倉島隆を殺してしまった瑞穂。まぁ倉島は殺されて当然かとは思うが、その死体が忽然と消えてしまう。瑞穂は逮捕されることもなく、普通に仕事をし恋愛をし、結婚し、子供を授かる。けれどその間ずーっと不安は消えない。これなら全てを話して逮捕された方が気持ちが楽な気がする。読んでいる間とても辛かった。

 

believerこと郷田の愛も歪みすぎていた。好きだから、愛しているから瑞穂の殺人をも隠蔽する。自分を犠牲にしてまで相手に尽くすことが本当の愛なのだろうか。いや、これって自己満足だよなぁ。だって結局瑞穂は幸せになれていないわけだし。愛ってきっと自分と相手が対等で、お互いに幸せであるところに生まれるものだと思う。どちらかの一方的な思いは相手には負担になる。

 

最後は誰も幸せになることなく、悲しい結末だし、新たな事件が起こる予感。本当にホラー。怖いのに、いや怖いから?サクサク読めて一気読みだった。人を好きになる気持ちは良いものだし、人に活力を与えるものだけど、ふと一歩下がって考えることも必要だ。これは愛なのか?と。