mooncatの図書館

本が好きです。図書館に住みたい。読んだ本の感想文を書いています。

夜中にジャムを煮る 平松洋子 レビュー ネタバレあり

 

食がテーマの本が好きだ。

 

食は楽しい。

目で楽しみ、香りを楽しみ、味を楽しみ、音を楽しみ、舌触りを楽しむ。まさに五感を使う行為。器や調理器具もこだわり出すとキリがない。

 

『夜中にジャムを煮る』題名からして好き。大量にいただいた果物。はて、食べきれないし腐らせたくもない。どうするかと言えばとりあえずジャムにしてしまう。鍋の中で大量の果物と砂糖がポツポツと音を立てて煮えるのが楽しい。誰もが寝静まった夜中に大きなお鍋でジャムを煮る。なんだか魔女になった気分だ。

 

読んでいると、そうそう!とうなづきながらもお腹が空く。特に好きな章は『旅日記・韓国のご飯』(p145〜)外国の食文化は興味深い。旅をして美味しいものを食べたい!とは思うが、自分の口に合わなくてもそれはそれでまた面白い。韓国でエイの刺身を食べ、噛んだ瞬間、強烈なアンモニア臭が頭の中を駆け巡ると書かれていたのには笑ってしまった。そしてどぶろくを飲んだら、いつものどぶろくが天下の美酒になった!もうもうもう!最高じゃないですか。

 

ふと思い出す。私は数年間シンガポールに住んでいた。シンガポールはフルーツが美味しい。マンゴーにマンゴスチン、ライチ、カスタードアップルなどなど。5月頃になるとアルフォンソマンゴーやグリーンライチも出回る。これがまた美味で。

 

ただ、一つだけ苦手なフルーツがあった。そう、フルーツの王様と呼ばれているドリアン。あの強烈な蒸せかえるような匂いが苦手だった。ゲイランという地区をバスで走るとバスの中にも匂いが漂ってくる。あぁ、早く過ぎてくれと願いながら並びに並ぶドリアンを横目にチラリ。あぁやっぱり苦手。一生食べることがないとは思っていたが、日本に帰国するとなった時に思い出として食べておこうとドリアンが並ぶゲイランに行った。

 

最後の思い出だからと一番高いドリアンをお願いし、目の前でパカリと割ってもらう。その瞬間に後悔。あぁもうこの強烈な匂いが無理だ。でも一口くらいは食べておこうと食べるも、脳天に突き刺さるような腐臭で目が眩んだ。お店のおじさんは笑いながら一つのマンゴスチンを差し出す。ドリアンの後はマンゴスチンだよと。一口だけ食べた残りのドリアンはパックに包んで持ち帰った。

 

おじさん曰くドリアンは割ってから4日目くらいからが一番美味しいとのこと。とりあえず帰宅し、自宅の冷蔵庫に4日放置してみた。意を決して4日目に再びドリアンと対面。あぁ苦手、やっぱり無理かも。でももう一回だけと思いドリアンを口に含む。あれ?美味しいかもしれない。もう一口。あれ?ラムレーズンっぽい。もう一口、一口と止まらない。あぁ!まさにフルーツの王様!!

 

シンガポールでは色々と美味しいものを食べたとは思うが、ドリアンほど強烈なものは無かった。食は楽しい。