mooncatの図書館

本が好きです。図書館に住みたい。読んだ本の感想文を書いています。

ツキマトウ 真梨幸子 レビュー ネタバレあり

 

誰が被害者で誰が加害者なのか。見る視点を変えると同一人物が被害者にも加害者にもなりうる。

 

今作も真梨幸子先生らしく多くの登場人物が微妙に絡み合っていて、そこを紐解いていくのが楽しかった。簡単に解説していく。

 

プロローグ

主婦の鈴木真琴は『銀河探偵コスモス』という小説にかつてハマっていた。作者の小田切昴(おだぎりすばる)は神のような存在だったが、未成年との淫行で捕まっている。そのため小説は打ち切り。真琴の小説熱はすっかり冷めてしまった。

 

ある日同じ小説オタクの友人A子から連絡がある。『銀河探偵コスモス』復活プロジェクトに参加しないかと。なんと小田切昴先生とも会えるらしい。真琴はかつての情熱を思い出し、プロジェクト参加を決意。実際に小田切に会えたことで大興奮。『銀河探偵コスモス』アニメ化のためという名目で小田切に何度も大金を払ってしまう。

 

それが夫の知るところとなり、詐欺だと気付く真琴。その頃小田切からは執拗にメールや電話、手紙が届くようになる。これってストーカー?真琴は『警視庁ストーカー対策室ゼロ係』に相談に行った。

 

ミュール

橋田結花

 警視庁ストーカー対策室ゼロ係勤務

 ユリエの従兄弟

 

二宮隆

 警視庁ストーカー対策室ゼロ係勤務

 橋田結花の同僚

 

 

ナオコ(浜田七緒子)

 有名ブロガー

 夫は浜田靖彦

 元夫は藤川賀津夫

 

浜田靖彦

 フリー編集者

 妻はナオコ

 元妻はミユキ

 

藤川賀津夫(かっちゃん)

 元妻はナオコ

 ナオコの前の元妻はユリエ

 無類の女性靴好き

 

藤川佑里恵(ユリエ)

 元夫は藤川賀津夫

 橋田結花の従兄弟

 激太りした

 鍵屋

 

B子(沢口圭子)

 ナオコの元同僚

 

登場人物が多くて相関図描きながらじゃないと無理!みんな結婚と離婚しすぎだよー!

 

アンビギュイティ

橋田結花は何者かに襲われ病院に収容されている。

 

相馬莉乃

 不動産会社M勤務

 大学生の頃予備校の受付でバイトしていた

 一人暮らし

 原田優人と付き合っていた

 

原田優人

 K大医学部出身

 実家は大病院

 

相馬莉乃は原田優人と付き合っていた時に撮られた性行為中の動画と写真を取り返すために、原田の家に度々侵入し、パソコンやUSBメモリーなどを押収。盗聴器まで仕掛ける。さらに全て燃えてしまえばいいと思い、原田が住んでいるであろうマンションに放火。

 

原田にストーカーされている、写真をばら撒かれると恐怖に苛まれていた莉乃だが見事なまでに加害者になっている。

 

キャンディ

常に全国模試でトップだった原田優人。ある日一位の座を明け渡すことになる。一位はH.Y.

原田はH.Yに会いに東京に行き、実際に彼女を目にする。何度も何度も彼女に会いに東京に通う原田はH.Yに恋をするようになる。

 

H.Y(横川日菜子)

 母子家庭

 自宅で殺害される

 

H.Yを殺害したのは原田。その様子を動画で撮影しUSBメモリに保存していた。

D(段田武史)はそのUSBメモリをネタに原田を高校生の頃から数年にわたり強請っていた。

相馬莉乃が放火したマンションに住んでいたのは段田。よって段田は死亡。

 

原田はH.Yが好きすぎて殺したってこと?その様子を撮影していたのも怖すぎる。

 

シイク

コバヤシさん夫婦が飼っていたロシアンブルーのミチコがマンション管理人に誘拐されていた話。

 

ファン

牛川ミルク

 八王子のご当地アイドル

 

ササキ

 牛川ミルクのファン

 ファンを拗らせ、ネットにミルクの暴言を書き込む

 刑務官

 

牛川ミルクの住むアパートの大家

 ミルクの部屋に盗聴器を仕掛ける

 

牛川ミルクはササキからストーカーされているとアパートの大家と共に八王子署に相談。その帰りに事故に遭う。大家は死亡、ミルクは一命を取り留める。

 

ミルクは入院中、盗聴器を仕掛けた犯人はアパートの大家と知る。更に大家がドナーカードを持っていて死後に臓器を誰かに提供したことを知る。自分に移植された心臓が大家のものだと勘違いしたミルクは自死する。

 

誰かを好きになって応援して、それが生きる活力になるのならいいけれど、人生を破滅させる方向に行くのは怖いな。

 

フリン

大井千奈美

 帝東クリエイティブ ドキュメンタリー映像部勤務

 母から監視されている

 妻子持ちの男性と不倫している

 父には隠し子がいる

 母は行方不明

 

不倫している千奈美に不倫された自分を重ね、千奈美を斬りつけた母。その母を千奈美は殺害し、自宅のクローゼットに隠している。

 

イットカン

橋田結花が意識を取り戻す。

この章で色々な事実が判明する。

 

B子(沢口圭子)は新井田涼という俳優に夢中。次第に新井田涼と付き合っていると思い込み、ストーカー行為に及ぶ。事務所から内容証明郵便が届き、ストーカー行為を止めるよう警告される。その内容証明郵便は母の沢口昌枝が燃やしてしまった。

 

圭子は子供の頃から問題児で、度々問題を起こしていた。その度に母が庇ってきたが、圭子からすると母にストーカーされていると感じていた。

 

橋田結花を襲ったのは沢口昌枝

浜田靖彦を殺害したのは藤川賀津夫

ナオコの部屋から一斗缶を盗んだのはユリエ

ナオコを殺害したのは沢口昌枝

沢口圭子は高校生の頃に好きだった同級生とその恋人を殺害して遺棄している

沢口圭子の秘密を知っているナオコは沢口昌枝を強請っていた

 

おぉぉぉ。そういうことか!もう登場人物みんなとんでもない。

 

追記

最初からずっと登場していた先生(和製レクター博士と呼ばれている)の正体は小田切昴。

田切にプロファイリングを依頼し始めたのは警視庁ストーカー対策室ゼロ係の前山室長。

田切は前山室長に付き纏われていると思っている。

 

さてさて、長かった。長々と読んでいただきありがとうございました。

 

これすごいのが、誰もが被害者であり加害者である。でも自分が加害者だなんて誰も一ミリも思っていないんだよね。されたことはずっと覚えているのに、自分がしたことは忘れてしまうのと同じか?

 

真梨先生の描く小説の登場人物ってみんな妄想がすごいし、とんでもないよね。現実世界は平和であってほしい、みんな幸せであってほしいので小説はドロドロを求めてしまう。次は何を読もうか。