mooncatの図書館

本が好きです。図書館に住みたい。読んだ本の感想文を書いています。

鸚鵡楼の惨劇 真梨幸子 レビュー ネタバレあり

 

もう二度と真梨幸子には騙されない。

 

そう思って心して読んだのに、またしてもやられてしまった。人間の思い込みの力には勝てないね。冒頭から騙された。“こうちゃん”=“河上航一”って思うよね?もうずーっと最後までこう思い込んでたから最後の衝撃がすごかった。あーそっちだったのね!と。

 

やっぱり登場人物の誰一人好きになれないんだけど、蟻塚沙保里は一般的に言うと成功者ということになるのだろう。人気エッセイストで家賃50万円の高級マンションに住み、夫と息子との3人暮らし。息子は有名な幼稚園に通わせている。外から見ると家庭も大切にしながら自らもしっかり稼いでいる。文中に描写はないがそれなりに沙保里は美人だろう。

 

これさもし沙保里が独身なら、だから独身なのよ〜って言われるだろうし、沙保里に子供がいなかったら子供作らないのかしら?と言われるだろうし、沙保里が専業主婦なら自分で稼いでないくせにって言われるんだよね。意地悪で自分に自信の無い暇な女性に。でも沙保里には隙が全くない。完璧だ。

 

その沙保里が息子の扱いに困っていたり、ママ友との微妙な関係の狭間にいたり、昔の恋人が逮捕されていたり。こんな完璧そうな人でも色々あるのね〜私普通で良かったと変な優越感を持ち、完璧な人が不幸になるのを見るの面白いわ〜とドロドロした感情が溢れ出てくる。私は善良で完璧な人間ではないから。

 

ママ友との描写もリアルで、個人的に今作ではこのあたりの描写が一番好きだ。バーキン野口とかヴァンクリ山谷とか。野口さん、頑張ってバーキン買ってそれをパーティーに持って行っちゃうかー!バーキン25くらいなら可愛いだろうけど、野口さんまさかの35とか持って行っちゃったのかな?しかも中古・・・このあたりの絶妙な格差を描くのが上手いよね。高ければいいってもんじゃないからね。

 

真梨先生の本を読むたびにあぁ自分は人間なんだなと思う。普段生活していく中で表立って他人に悪意を向けることはないけれど、真梨先生の本の中では登場人物をせせら笑う自分がいる。自分の中のドロドロした感情が全面に出る。これが楽しいのだ。