mooncatの図書館

本が好きです。図書館に住みたい。読んだ本の感想文を書いています。

2021-01-01から1年間の記事一覧

禁猟区 乃南アサ レビュー ネタバレあり

乃南アサ先生の警察官ものと言えば音道貴子シリーズが好きだ。この小説のどこかに出てくるのでは?と期待していたのだが、そんな期待を忘れるほどに監察官という組織が興味深かった。監察官とは警察官を取り締まる組織。そりゃ、警察官だって人間だから悪事…

蹴りたい背中 綿矢りさ レビュー ネタバレあり

昨日の芥川賞受賞発表に合わせて、蹴りたい背中を読んだ。蹴りたい背中が芥川賞を受賞したのが18年も前ということに驚いた。 誰もが口にすることはないがスクールカーストというものは存在する。今作はスクールカーストの表現がとても緻密で、そういえばそん…

朝が来る 辻村深月 レビュー ネタバレあり

島国だからだろうか。日本は血縁関係や家をとても大切にする。 好きで個人と個人が結婚するのに、結婚式では○○家、××家と謎の表記がされたりもする。個人の結婚なのに家と家が繋がるような変な風習だと私は思う。 さて、今作では子供を望むのに子供を授から…

アミダサマ 沼田まほかる レビュー ネタバレあり

パンドラの箱を開けてしまった。 人には知らなくていいことがある。いや、知らない方が幸せなことが多いだろう。『アミダサマ』ではパンドラの箱を開けてしまった故の悲劇、悪夢をまざまざと見せつけられた。 産業廃棄物置き場の冷蔵庫の中から発見された幼…

彼女がその名を知らない鳥たち 沼田まほかる レビュー ネタバレあり

本を読んでいてこんなに胸が詰まったのは久しぶりだ。 昔の恋人が忘れられない十和子は寂しさを埋めるため15歳年上の陣治と暮らし始める。食べ方が汚い、トイレをすぐに汚す、どじょうみたいなど、十和子が陣治を表現する様は何ともひどい。仕事から帰宅し、…

九月が永遠に続けば 沼田まほかる レビュー ネタバレあり

主要な登場人物に根からの極悪人はいないのに、この終始漂う不穏な雰囲気は何なのだろう。ずっと靄がかかっている感じ。スッキリしない。 物語は佐知子の高校生の息子文彦が失踪するところから始まる。誘拐されたのか、事故に遭ったのか、何か事件に巻き込ま…

6月31日の同窓会 真梨幸子 レビュー ネタバレあり

女性同士の本当に美しい友情なんてあるのだろうか?どんなに仲良く見えてもその心の中は誰にも分からない。そんな女性のドロドロが読める!嬉々としてこの作品を手に取った。 伝統ある女子校の卒業生の連続不審死。死亡した女性たちは皆6月31日に開催される…

すれ違う背中を 乃南アサ レビュー ネタバレあり

小説の中の登場人物とお友達になってみたいと思ったことはないだろうか? 週末前だし、プレミアムビールを片手に芭子の家に遊びに行きたい気分だ。芭子と綾香と3人でビールを飲みつつ、大石のおばあちゃんの作ったご飯と商店街で買ってきたお惣菜をつまみた…

いつか陽のあたる場所で 乃南アサ レビュー ネタバレあり

人には誰しも背負っていることの一つや二つはある。過去は変えられないし、どんなに悔いても時間は戻らない。前を向いて生きていくしかないけれど、自分が前科持ちだったらどうだろう? 前科持ちの女性二人、芭子と綾香。出所してからのお話だ。3部作の構成…

星降り山荘の殺人 倉知淳 レビュー ネタバレあり

やっぱり密室系のミステリーが好きだ。 密室系のミステリーといえば、綾辻行人先生の『十角館の殺人』を始めとする館シリーズ、アガサ・クリスティーの『そして誰もいなくなった』を思い出す。相関図を書きながら、誰がどの部屋にいたか、どこに座ったかを頭…

インタビュー・イン・セル 殺人鬼フジコの真実 真梨幸子 レビュー ネタバレあり

なぜ人は『特別』という言葉に弱いのか。 あなただけ特別だよ。と言われて悪い気がする人はいないだろう。人は誰しも誰かに認めてもらいたい承認欲求がある。誰かから特別と言われるとその承認欲求が満たされるのだ。この『特別』という言葉に作中ではたくさ…

すずの爪あと 乃南アサ レビュー ネタバレあり

基本的に短編小説はあまり好きではなかったが、1冊でいくつものお話が読めるのは実はお得なのではないだろうか。すずの爪あとは暗い話が多く私は個人的に好きだ。 すずの爪あと石川県珠洲市が舞台。なんと猫のふくちゃん目線の物語だ。珠洲市に原子力発電所…

いちばん長い夜に 乃南アサ レビュー ネタバレあり

まえ持ちって何かと思ったら前科持ちのことなんですね。 毎日ネットでは殺人があった、窃盗があった、事故があったと悲しいニュースが多い。外野は待ってましたとばかりに犯人探しをし、住所や名前を特定し、ネットに垂れ流す。この事件は犯人の身勝手な犯行…

殺人鬼フジコの衝動 真梨幸子 レビュー ネタバレあり

言葉の力は思っているよりもすごい。 何気なく言った言葉が人の人生を大きく左右する。良くも悪くも。かわいいね、美人だねと言われ続けた人は本当に美人になるし、ブスだの馬鹿だの言われ続けた人は本当にブスになる。 さて、この作品は殺人を犯し続けたフ…

ふたり狂い 真梨幸子 レビュー  ネタバレあり

え?どういうこと?結局誰が狂ってたの? 読み終わった時の率直な感想。ピースがパチパチと合うことがなく終わってしまった。頭の中が混乱したままモヤモヤだけが残る。はい、もう一回読めということですね。まんまと2周目。今度はメモをとりながら読んだ。…

あの女 真梨幸子 レビュー ネタバレあり

最初から騙されずに読んだ人いる? いやーすっかりミスリードされて読んでしまった。最後にえ!?ってなるの好きだ。そして読み終わった後すぐに読み直してしまいたくなるこの感じ。真梨先生さすがです! さて、こちらの作品は単行本発刊時は『四〇一二号室…

みんな邪魔 真梨幸子 レビュー ネタバレあり

真梨幸子先生の作品の怖いところは、誰しもがそうなり得るというところである。 登場人物があまりにも自分からかけ離れてサイコパス過ぎると、そういう人もいるんだなぁ、怖いなぁで終わるけれどちょっとした掛け違いで誰しもが登場人物と同じような人生を歩…