mooncatの図書館

本が好きです。図書館に住みたい。読んだ本の感想文を書いています。

みんな邪魔 真梨幸子 レビュー ネタバレあり

真梨幸子先生の作品の怖いところは、誰しもがそうなり得るというところである。

登場人物があまりにも自分からかけ離れてサイコパス過ぎると、そういう人もいるんだなぁ、怖いなぁで終わるけれどちょっとした掛け違いで誰しもが登場人物と同じような人生を歩み得るのだ。

さて、こちらの作品は単行本発刊時は『更年期少女』だったそう。私は更年期少女の方が個人的には好きだけど。登場人物がエミリーとかガブリエルとかカタカナで、昔読んだシェイクスピアを思い出した。とにかく誰が誰だか分かりづらく最初の相関図を見ながら読み進めることに。途中からはスラスラ読めたけれど。

なんか人間ってどれだけ幸せそうに見えていてもみんな色々あるよね。そんなお話。綺麗な服を着て5000円もするランチを食べながら優雅に過ごしていても、その実情は誰にも分からない。私からすると500円のランチでも高いんだが(笑)

少女漫画『青い瞳のジャンヌ』という共通点がありつつも、みんなそれぞれ腹の底では自分さえ良ければいい。自分だけが得をしたい。自分が、自分が・・・という醜い考えが滲み出ているのが最高に面白く一気読みしてしまった。面白いなんて表現は不適切かもしれないが。

登場人物の中で一番ありそうだなと思ったのはミレーユさん。典型的な親子の共依存関係。特に母と娘という同姓同士はあるあるだよなぁ。自分に自信が無い、無趣味な母親と甘やかされて育った娘。ミレーユさんの章は読むのが一番辛かったけれど、正直ページを繰る手が止まらなかった。何度離れてもいつも同じ鞘に戻ってしまうのがもどかしい。

親子と言えども考え方も全く違う他人として認めてやっと離れられるんだろうね。日本の家の制度って不思議。結婚でも個人と個人の結婚というより、家と家との結婚って感じだよね。未だに結婚式は〇〇家なんて書かれたりね。親子でも兄弟でも親戚でも合わない人もいるし、苦手な人もいる。それでも我慢するのが当たり前ではないし、お互いが不幸になる前に早々に縁を切ればいいんじゃない?

それにしてもガブリエル!まさかあなたが男性だとは思いもしなかったよ。ジゼルさんの妊娠の件でおや?とは思ったけれど、まさかね。ものすごく儚い可憐な女性を想像しながら読んでたから本当これが一番びっくりした。

いやはや、何歳になっても自分が夢中になれる趣味を持つっていうのはそれはもう素晴らしいことだけれどみんな行きすぎちゃったね。それを止めてくれるような人が周りにいればまた違ったんだろうけどね。