mooncatの図書館

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カケラ 湊かなえ レビュー ネタバレあり

日本人は他人の容姿に厳しい。

海外3カ国に住んだことがあるが、他人に容姿のことで何か言われたことは一度も無かった。でも日本では容姿に対する心ない言葉を何度も浴びせられた。よっぽどの美人でない限り、デブとかブスと言われたことのある人が大半なのではないだろうか。言った方は忘れていても、言われた方はずっと覚えているよね。

美醜の定義は人それぞれで体型も然り。自分が良しと思えばそれでいい。だけど今の日本では美の基準は、手足が長く、痩せていて、目が大きくて二重、鼻が高く、鼻筋がスッと通っていて、歯並びが良くて、歯は白く、顔は小さい。挙げだすとキリがないけれどこんなところだろうか。この定義から少しでもはみ出すと特に若い女性は自分のことをブスだと勘違いする人も少なくない。

今作は美容外科医の橘久乃=サノちゃんが聞き手となり物語は進んでいく。大量のドーナツに囲まれて死んだ有羽に何があったのか?その真相に迫っていく。痩せていることが美しく、太っていることは醜い。星夜と有羽、横網八重子以外の語り手がこの価値観。自分の価値観を無理に変えることはないけれど、自分が正しい!と思い込み他人に説教をする柴山登紀子だけは意味不明。

有羽は周りの人の悪意を全部受け止めて死んでいったのかな。父親の恵一の度重なる浮気、実母の千佳が八重子を利用したこと、叔母のメグが八重子を誤解して責めていること、高校教師の柴山が八重子を虐待だと罵ったこと。自分が痩せれば八重子が他人から責められるはずがない、だから美容整形という選択をした。それなのに・・・。

さすがイヤミスの女王。前半はゆっくり、後半はググッとのめり込めるほど人の悪意が全面に出ていて面白かった。でも横網八重子だけは本当に本当に可哀想だよなぁ。人にバカにされ、利用され、誤解され散々だよね。有羽がいなくなってこれからどう生きていくのだろう。メグとの誤解が解けるといいな。個人的に恵一が語り手の章が読みたかった。