mooncatの図書館

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オーダーメイド殺人クラブ 辻村深月 レビュー ネタバレあり

 

子供の世界はとても狭い。学校のクラスの狭い教室が全てだ。そこで誰と仲良くするか、上手くやっていけるかが全てだ。クラスのヒエラルキー最上位にいたとしても、ある日突然最下位に落ちることもある。特に理由はなくても。なんとなく生意気、勉強ができるから調子に乗っているなどなど。訳の分からないことで外したり外されたり。大人なら自分の意思でさっさとそんなレベルの低い人たちから離れることができるけれど、子供はそうはいかないよね。

 

今作ではクラスの一軍に属するアンが主人公。死に興味津々だし、猟奇的な絵や写真が好き。でも馬鹿にされるのが怖くて隠している。そしてそんな自分と同じような美意識を持ち合わせていそうなクラスの三軍の男子、徳川に自分を殺すよう依頼する。

 

一軍のアンが三軍の徳川と会うところを見られたくなくて放課後こっそり誰もいないようなところで会ったりするんだけど、いいなぁー!って思った。若いなぁ羨ましいなぁって。クラスで外されてもさ、一人でも自分と変わらず接してくれる人がいるって全然違うよね。死を依頼して、どういう風に死ぬかとか相談して決めて、予行演習で写真とか撮って。もうデートじゃん!って。アンはクラスの女子から外されて辛かっただろうけれど、ちゃんと支えてくれている徳川がいるよって。気付いてって。

 

クラスの女子から外したり、外されたり。今もあるのかな?私は小学生の高学年の時にあったな。昨日までは普通だったのに、ある日突然誰にも口をきいてもらえなくなって、給食も一人、移動教室も一人になっちゃって。あれ?って思うしその時はめちゃくちゃ辛いんだけど、数ヶ月もしたら元に戻っていて。首謀者は分かってるけれど、誰もその子に逆らえないんだよね。先生も見て見ぬふり。流石に中学生にもなるとそんなつまらないことをする人もいなくなったけれど。

 

今作でアンが外されている描写は本当にリアルで生々しく、胸がギュッて痛くなった。だから徳川の存在が私は愛しくて愛しくて。徳川、ありがとうって思いながら読了。

 

もし今、クラスの子たちと上手くいっていなくても、外されていてひとりぼっちだよって思っていても、大人になると学生時代のクラスメイトと会うことなんてほとんどないし、これから先一度も会わない可能性だってあるんだよ。現に私は小学校のクラスメイトとなんて20年以上誰とも会っていないし、思い出すこともない。外すとかカッコ悪いことなんだよ。いじめられる方にも原因があるなんてこと絶対無いからね!

 

最後は辻村先生らしい爽やかな終わり方。アンは芹香たちの目を気にせず徳川に話しかけ、これから二人はどうなっていくのだろう?なんて良い想像しかできない。中学生というちょっと不安定な時期の心の動きとか、アンと徳川の距離が少しずつ縮まっていく描写がとても丁寧に描かれていて、やっぱり辻村先生の作品が好きだなと思った。