mooncatの図書館

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鍵のない夢を見る 辻村深月 レビュー ネタバレあり

 

本を買う時、皆様はどこを見ますか?表紙を見て買うも良し。裏表紙を見て買うも良し。あとがきを読んで買うも良し。私はいつも裏表紙を読んで買うかどうかを決める。あとがきは最後に読むようにしている。

 

今作は辻村先生の5作からなる短編小説集。ことごとくダメ男が登場する。読み進めていくうちに、林真理子先生の『最終便に間に合えば』を思い出すなぁと思いつつ読了。まさかのまさか、あとがきとして林真理子先生が出てきてびっくりした。本編ももちろん楽しめたのだが、あとがきが一番興奮したかも。

 

今作で登場するダメ男は種類は違えど根本は同じ。自分は他人とは違うと思い込んでいる。皆自信過剰なのだ。特にそれが顕著だったのが『芹葉大学の夢と殺人』の中の雄大だ。こういう人学生時代にいたなぁ。自分は他の奴らとは違う。と遠巻きに他人を馬鹿にしている人。就活なんてしない!と声高らかに言っていたけれど、今はどうしているのだろう?

 

そしてそんなダメ男に惹かれてしまう未玖。若い頃ってこういう孤高の存在というか、自信満々な異性ってかっこよく見えるよね。しかも容姿も良いときた!高い目標を持つこと、夢を持つことは悪いことではないが大人になるにつれてそれが現実的なのか非現実的なのかが嫌でも分かってくる。未玖は就職もして堅実な道を歩んでいるのだから、雄大がどれだけ親に甘やかされているかは分かるはずなのになかなか離れられない。読んでいてもどかしい。

 

側から見るとそんな男さっさと切ればいいのに!と思うけれど、結局つまらない男に捕まる女はつまらない女。彼氏や夫の悪口を言っている女性も同じ。自分と同レベルの相手としか人間は惹かれ合わないのだから、自分がどれだけレベルの低い人間かを宣言しているのだ。

 

結局ダメ男と縁を切るには自分を変えるしか道は無い。仕事に力を入れたり、自分の趣味に没頭したり、やったことのないことに挑戦してみたり。とは言え、私も昔はダメ男と付き合ったことがある。今思うとなぜあんな男と?と思うが、それほどまでに自分がダメな人間だったのだ。あぁ思い出すだけで恥ずかしい。若かりし10代。

 

今作ではどのダメ男も今後成長することがなさそうで残念ではあるが、女性の方はさっさと自分を成長させてダメ男と縁が切れることを願うばかり。いつもの辻村先生らしい青春の爽やかさはなかったけれど、とても面白く読めた。