カエルの楽園2020 百田尚樹 レビュー ネタバレあり
大きな問題がない平和な時期は、リーダーが誰であっても物事はスムーズに進んでいくものである。色々な問題はあれども日本は平和な国だった。しかしながらコロナウイルスが蔓延し始めた頃はどうだっただろう。
国の決定は遅いものだった。
水際対策は遅れ、マスクや消毒液の転売が横行し、倒産する会社が増え、失業者も増えた。お金に困り路頭に迷う人がいる一方で、議員の給料は高水準を保ったまま。国民の不満は募る一方。
そんな情勢をカエルの世界になぞらえて書かれた百田先生の今作。登場人物や地名の名前が面白く笑ってしまった。
ナパージュ=日本
ウシガエル=中国
スチームボート=アメリカ
南の崖=尖閣諸島
マイク=テレビ局
デイブレイク=某新聞社
イエストール=高須先生
ツーステップ=自民党の二階
などなど。名前を見るだけでも面白い。個人的にはイエストールがツボだった。百田先生のセンスが好き。
コロナ禍では国民が混乱したのはもちろん、政府の遅すぎる決断、責任のなすりつけ合いを目の当たりにして政府に失望した人も多いことだろう。私もそのうちの一人だ。
困った時に政府は守ってくれない、助けてくれない、道を示してくれない。ならどうすればいいのか?自分の頭で考えて行動するしかないのだ。数ある情報の中で、どれが正しくてどれが間違っているのか。テレビや新聞に書かれていることは信頼できる情報なのか。
ある一人の人がSNSでトイレットペーパーがなくなるという発信をした。そしてその情報を信じトイレットペーパーを買い溜めした愚かな人々。自分の頭で物事を考えないから、つまらないデマに左右されてしまう。コロナ禍ではある意味、賢い人とバカが極端に二極化されてしまった。
コロナ禍において社会で起こっていたこと、無能な政治家の様子が面白く分かりやすく描かれている本書。グッドエンディングなんて今は期待できないけれど、将来的にこうなればいいよねなんて希望を持ちたい。