mooncatの図書館

本が好きです。図書館に住みたい。読んだ本の感想文を書いています。

とり残されて 宮部みゆき レビュー ネタバレあり

 

ゴールデンウィークは本をたくさん読もうと決めて読んだ一冊。短編なのにグッと引き込まれる作品ばかりだった。

 

とり残されて

婚約者を事故で亡くした女性。事故を起こした犯人は未成年で大した罪にも問われず、反省の素振りもない。許せない、殺してやりたい。

 

そんな女性が体験した不思議なことをきっかけに自身の生きる活力を取り戻す。婚約者が事故死したあの日にとり残された自分を迎えに行くのだ。

 

人を恨むという感情はある意味生きる力へと直結するのだろう。どうか良い方向に向くといいのだが・・・

 

おたすけぶち

10年前に亡くなった兄を供養するために事故現場に向かった孝子。そこで偶然にも知った真実が怖すぎた。昔の閉鎖的な村では現実にありそうなお話。

今作の短編集の中で一番ゾッとしたし、一番好き!

 

私の死んだ後に

子供の頃に犯してしまった罪に苦しみ、ボールを投げられなくなったピッチャー。喧嘩により生死を彷徨っていた時に不思議な女性と出会う。

 

心の葛藤が少し晴れ、前向きなラストにホッとした。

 

居合わせた男

ちょっと星新一っぽいなぁなんて思いながら読んだ。

自身の後ろめたい気持ちによって見たくないものが見えてしまうのかも。

 

囁く

自分の欲望に素直に従ったらどうなるのか。法を犯さず、人に迷惑をかけないのなら好きに生きればいいのだが。

あぁ、素直にそっちに行ってしまったのね。後悔しか残らない結末。

 

いつも二人で

死んだ女性に乗り移られた男性。一つの体を二人で使っている状態。

二人のやりとりが軽快で面白く、次第に自信をつけていく男性の変化も面白かった。最後どう着地するのかな?と思っていたけれど、納得の結末。

 

たった一人

パラレルワールドは存在するのだろうか?今自分がいる世界と、他の選択をして別の道を進んだ自分の世界と。もし存在するのなら、自分がいる世界が一番幸せであると信じたい。

 

この世界では既に死んでしまっている男性は別の世界では生きている。彼は自分にとっては大切な人。絶対に取り戻してみせる。

そんな主人公の強さを感じる作品。

 

どの作品も面白かったけれど、私は『おたすけぶち』が一番好きだった。

皆様はどの作品が好きですか?